生成AIの登場によって「セールスDX 3.0」の世界へ?
──なるほど……。とはいえ、売り物が複雑化している以上、データの蓄積や、効率的な売り方を実現するためには、Sales Techの活用は避けられないのかなとも思います。
生成AIの登場によって、「セールスDX3.0」の時代に突入したと思っています。セールスDX1.0は、CRM/SFAをベースに管理者目線の情報収集・一元化が行われていた時代。セールスDX2.0は、「セールスエンゲージメントプラットフォーム」が登場した世界。データを貯めるだけではなく、実際に営業活動にデータを活かすことができるようになっているのが現在です。
データのビジュアライゼーションや、レコメンドによって、営業の行動が変わっていくような、そんなツールが登場し、活用され始めているわけです。
一方で、セールスDX2.0の世界にいくためには、またシステムを導入しなくてはならないという壁があります。先ほどお伝えしたとおり、すでにプロセスごとにシステムが乱立しているんですよね。SFA、ワークフロー、RPA、BI、基幹系システム、契約管理システム……。現場は1つひとつの使い方を覚えないといけないわけです。これを新たなシステムの導入ではなく、ひとつのUIで活用できるようにしようというのが生成AI活用のひとつのトレンドなんです。
──なるほど。最終的にはデータの入力、活用の画面がひとつになるようなイメージでしょうか。
要は問いかけるだけで、裏側にあるデータを持ってきてくれるイメージですね。そしてユーザーはその際、裏側にあるシステムを意識する必要がない、というのがポイントで、これが現実のものになりつつあります。AIと対話し、相棒として活用できる世界が、セールスDX3.0で見えてくる世界です。
──データやシステムはあるものの、逆にそれらに忙殺されていた営業組織にとってAIが良い相棒になるというイメージがわきました。一方で、「営業組織で本当に使えるの?」「もう生成AIに期待していない」という雰囲気の営業組織も少なくないはずです。裏側のデータを活かすために、どんなことを意識する必要がありますか。
まず、「AI万能論」ははっきりと否定したいですね。というのも、過度に期待をするからこそ、幻滅期が早くなってしまっているのではないかと最近思っているんです。
AIは打ち出の小槌ではなく、活用するためには最終的には意識する必要がないデータの収集・整備はもちろんやらねばなりません。その次に、生成される回答のためのロジックを用意する必要があります。ハルシネーションを防ぐための抽出ルール設計も大事ですね。
ハルシネーションにおびえる人も多いですが、検索エンジンが出始めたときのヒット率なんてとても悪かったじゃないですか。人間がワードの抽出に慣れていなかったからという課題もあるし、各コンテンツにSEO対策がなされていなかったなど、さまざまな要因があります
──検索にたとえると、わかりやすいですね。
ただし、対話型のAIを活用する際に「検索とまったく同じ」と勘違いしてはいけません。あくまで営業組織の生成AI活用においては、分析・サマライズののち、新しい何かを生みだすことに価値があると思っています。だからこそ、プロンプトの設計が大事です。プロンプトの設計はAIではなく、人を教育するためにもあると思っていて、「こう問いかければこんな回答が返ってくる」という再現性のある状態をつくることができます。