業務課題を解決する「真のデータ活用」に挑戦
1875年に創業し、2025年には創業150周年を迎える京都の老舗企業、島津製作所。「科学技術で社会に貢献する」という社是を掲げ、計測機器、医用機器、産業機器、航空機器と幅広い分野の製品開発、製造、保守を行う総合機器メーカーだ。2024年度3月31日時点で売上高は約5,119億円にのぼり、4期連続の増収増益を実現している。
同社は2019年にBIツール「Domo」を導入した。当時、製造推進部に所属していた山川氏は「データに基づいた製造」という方針に基づき、各拠点に点在しているデータを接続できるBIツールを模索していた。そこで導入したのが「Domo」だ。
「Domo」導入後は棚卸し在庫の削減を実現し、製造部門において利用者が拡大。2019年から2022年までの間にMAU(Monthly Active Users)は順調に増加した。しかし、山川氏は「今後、MAUは下がっていくのではないか」と危機感を抱いたという。作成したダッシュボードは使われていないものも多く、成果につながっていなかったのだ。
成果を生み出すデータ活用を継続的に促進するには、何から始めるべきか。DX・IT戦略統括部が発足してからは「試行錯誤の日々だった」と山川氏は振り返る。ガイドラインや他社の成功事例など参考になる情報は多数あるが、その中から何を選んで取り組むべきか模索していたという。
そうした中、転機がおとずれる。山川氏はひとりの担当者からある相談を受けた。それが同社でSCM(サプライチェーンマネジメント)を担当する田口氏だ。この出会いが、島津製作所の「DX人財育成」の原点となった。
「当時はコロナ禍や紛争といった有事が重なり、材料の需要と供給のバランスが大きく崩れていました。難しい局面において、マネージャーは自らの勘と経験と度胸に基づき、多くの工数を費やして社内外の情報共有を行っていたのです。こうした状況を受けて、田口氏から『データ活用でこれらの業務課題を解決したい』と相談されました」(山川氏)