トップ営業の靴はキレイだとよく聞くものの……
ダメ営業スタッフ時代の私は、トップ営業スタッフを見ては「手っ取り早く結果が出る方法はないかな」と探していた。「トップ営業は特別なワザやマル秘トークで結果を出している」と思い込んでおり、「それさえ盗めれば結果は出る」と必死だった。参考にするのは悪いことではないが、トークを真似してもまったく結果が出なかった。
後々わかったのだが、実際トップ営業スタッフは特別なことをしていないし、マル秘トークもしていない。普通の人が見落としがちな「あたりまえ」のことをしっかりやっているだけ。“些細な行動の違いの積み重ねが大きな結果の差になってくる”と気がつくまで、ずいぶんと時間がかかったものだ。
過去の私と同じように苦戦している営業スタッフは、手っ取り早く結果が出そうなノウハウには興味を持つが、地味なマナーにはあまり興味を示さない。知識を得ても、「そんなことをしても結果には関係ないし」と見向きもしない。実はそういった些細なマナーが、大きく影響を及ぼすことも多い。代表例のひとつが“靴の扱い方”である。
営業職であれば、“トップ営業の靴はキレイ”という話はよく聞くだろう。作法やビジネスマナーの本にも“マナーは足元から”と書かれている。誰もが知っていることであるが、実行している人は多くはない。 これが結果を阻む意外な盲点になっている。
歯医者を経営している知人のこと。以前から医療器具の営業スタッフが飛び込みでよく訪問するようになった。こういった営業スタッフを普段は相手にしないが、あまりにも熱心だったため「一度だけ話を聞こう」と思い、 受付の人にそれを伝えておいた。それからしばらくしてその営業スタッフが訪問してきたため、話を聞くことに。話を聞くと言われた営業スタッフはさぞかし嬉しかっただろう。
その際、営業スタッフは玄関で靴を脱ぎ、手を使わずに片方の足で靴を端に寄せたという。しかもその靴は手入れがされておらず汚れていた。その営業スタッフの靴と靴の扱いを見た受付の女性は「申し訳ありませんが、当医院はあなたとお付き合いすることはありませんので」とその場でお断りした。その受付は医院長の奥さん。人を見る目がある方だ。
その営業スタッフはせっかくのチャンスを靴と靴の扱いのせいで潰してしまったのだ。本人はそのことにまったく気がついていないだろう。私も同じような経験がある。