「信頼関係構築」は抽象的で難しい?
──顧客との信頼関係の構築は営業の成果を大きく左右するものの、そこに抽象性や難しさを感じている営業パーソンも多いと思いますが、どう思われますか。
そうですね。営業において「信頼関係」が大切なことに議論の余地はないと思います。私もかつては、先輩や上司に言われました。ただ、どうやるのかと上司に聞いても、回答が抽象的なんですよね。「それはお客さんの立場に立って、本気になって考えてだな……」というふうに(笑)。
しかし、法人営業から営業コンサルタントの立場になり、企業の「営業の型化」をお手伝いするなかで、営業パーソンがどのように顧客と信頼関係を構築していけば良いかがわかってきたのです。
当社のメソッド記事でも紹介していますが、信頼関係を構築するために知っておきたい、判断の「3つのメカニズム」と「ソーシャルスタイル理論」について、今日はお話ししたいと思います。
判断の「3つのメカニズム」
──判断の「3つのメカニズム」から教えていただけますか。
3つのメカニズムは、顧客が「この営業パーソンは信頼できる」と判断するときの基準です。ひとつめが合理的判断、ふたつめが感情的判断、3つめが無意識的判断です。
合理的判断は、「この営業パーソンと付き合っていくと、自分にメリットがある」という判断です。顧客にとってのメリットは、「自分でも気づかなかったニーズを探って提案をしてくれる」「知らない情報を教えてくれる」などです。
また、顧客は膨大な情報の中から必要な情報だけを得たいと考えているため、情報が取捨選択され、良い意味で簡素化されたものを営業パーソンから入手できると嬉しいですよね。売れる営業パーソンはこのような顧客目線のアプローチを実践しています。
感情的判断は、「この営業パーソンと一緒に仕事をしてみたい」「仕事ぶりや価値観に共鳴する」といった心の動きです。
たとえば、依頼した期日よりも早いスピードで、期待値を超える内容を提案してくれる営業パーソンがいれば、「自社に時間を割いてくれている」「真剣に向き合ってくれている」と、多くの顧客が心を動かされます。
実際に、顧客から依頼された期日の半分(50%)で、期待の2倍(200%)の価値を提供する「50%、200%」というマイルールを実践しているトップセールスもいます。圧倒的なスピードと質は、顧客を感動させるのです。
無意識的判断は、文字どおり無意識に信頼してしまうという意味。アルバート・メラビアンという心理学者が提唱した「メラビアンの法則」によれば、人が印象を判断する際のウェイトは、見た目55%、聴覚38%、話7%だと言われています。
この3つの判断基準は、顧客によって異なります。すべての判断基準に合わせたアプローチができれば、顧客との信頼関係構築がよりスムーズにできるようになるでしょう。