米国Salesforceは2023年10月23日(米国現地時間)、製薬および医療機器企業向けプラットフォーム「Life Sciences Cloud」を発表した。これにより、医薬品や医療機器の開発を加速し、臨床試験の全過程において患者の参加と維持を促し、AIを活用して顧客にパーソナライズされた体験を提供することが可能になる。
ヘルス&ライフサイエンス部門のSVP兼GMであるアミット・カンナ(Amit Khanna)氏は、次のように述べている。
「ライフサイエンス業界では、研究開発から商業化まで、より強固なステークホルダーとの関わりを実現するために、データ、AI、CRMを活用した、コンプライアンス準拠の信頼できる統合ソリューションが求められています。Salesforceは、ヘルスケア分野での経験を活かして、臨床試験、収益支払い管理、よりパーソナライズされたコミュニケーションなどの機能を追加しています。これにより、ライフサイエンス組織へのサービスを向上させ、業界が顧客により優れたサービスを提供できる効果的な方法を提示しています」
Salesforceの医療機器向けソリューション
Commercial Operations(日本市場で一般提供中)
契約のコンプライアンス、価格設定、在庫レベルなどに関するタイムリーなインサイトにより、商用ライフサイクルを管理する。たとえばある製品が利用できない場合、AIを搭載したボットが現場の担当者にアラートを送信したり、顧客予測に関するインサイトを提供したりする。Commercial Operationsには次の機能が含まれている。
- Health Intelligence:Tableauにより強化され、情報に基づいたビジネス上の意思決定を促進するためのインサイトを提供する予測分析ツール。医療機器の営業チームは、推奨されるリベート、バンドル、または割引価格情報を取得でき、顧客が既存のカタログに追加できる新しいオファリングを特定することが可能になる。
- Medical Sales Emails:生成AIを使用して、病院や診療所などのステークホルダーに新しい医療機器が利用可能になったことを通知したり、医師への営業訪問のフォローアップをしたりするための、カスタマイズされたメッセージを自動作成する。
Clinical Operations
ライフサイエンス組織が、参加者、臨床現場、研究、スポンサーをサポートするために、従来型と分散型の両方で効率的な試験の設定および実施を支援する。Clinical Operationsには次の機能が含まれている(各機能は日本市場での提供を準備中で2024年半ばに一般提供開始予定)。
- Data Cloud for Health:さまざまな情報源からの医療、社会、行動に関する患者データを、統合されたリアルタイムプロファイルに安全に接続しアクティブ化する。これにより、製薬会社や医療機器企業は、潜在的な患者を特定したり、臨床試験における治療の遵守などにおけるリスクを研究したりすることができる。また、新しい臨床試験やケアプログラムに適したグループなど、そのデータからセグメントを作成することが可能。
- Chain of Custody Management:製薬会社が先進的医薬品に関するイベントを明確で追跡可能なデジタル履歴として維持し、米国食品医薬品局の規制に沿った電子署名で記録を検証できるようにする。これにより、アフェレシスから投与まで、細胞・遺伝子治療のあらゆる段階を通じて、患者の安全性とコンプライアンスに基づいた記録保持が促進される。
- Participant Management:自動マッチング機能とカスタマイズされたポータルにより、無作為に選んだ治験の被験者の参加を迅速化する。これにより、治験の被験者の募集、教育、参加が促進され、臨床試験のスピードアップに貢献するとともに、離脱率の低下につながる。
Pharma CRM
製薬会社が個人の通信とその医療、法律、および規制当局によって承認されたデジタルコンテンツを使用して、ステークホルダーとのやりとりを支援するエンゲージメントプラットフォーム。これには、医薬品サンプルの管理や医療機関の同意取得、さまざまなチャネルでの投薬に関する照会の合理化が含まれる。Pharma CRMには次の機能が含まれている(各機能は日本市場での提供を準備中で、2025年下半期に一般提供開始予定)。
- Healthcare Professional(HCP)Engagement:AIを使用して、エンゲージメントデータ、クレーム、および研究のインサイトから学習し、オフライン機能と組み合わせることで、ハイブリッドHCPエンゲージメントをサポートする。HCPを360°俯瞰することで、製薬会社は適切な人々に適切な処方箋を提供できるようになるとともに、治療法を広く普及させることができる。
- Einstein for Life Sciences:ターゲットを絞ったEメールのアウトリーチ業務などの手作業を自動化する。ナレッジ記事とService Repliesは、リエゾン業務担当者が適切な文書を素早く見つけ、過去の成功事例を役立つ情報源として再利用し、合意された期限内に医療事務の要請に対処することを可能にする。