バーチャレクス・コンサルティング(以下、バーチャレクス)は、カスタマーサクセスに関する実態調査を実施した。本調査結果は、同社が発表した第四弾の結果を取りまとめたもの。
効果を感じている層の半数近くが、タッチモデルの構築・フェーズを分けた運用を実施
カスタマーサクセスの効果を感じている層、感じていない/どちらとも言えない層それぞれに対し、カスタマーサクセスの運用についてたずねた。効果を感じている層の43.5%が「タッチモデルを構築している」と回答し、昨年の38.1%から5.4pt上昇。一方、効果を感じていない/どちらとも言えない層は7.1%という結果になった。
サクセスロードマップに応じた運用プロセス・ルールを定めているかたずねた。効果を感じている層の47.8%が「フェーズを分けた運用をしている」、33.3%が「フェーズ分けの試験運用を始めている」と回答した。一方、効果を感じていない/どちらとも言えない層では、7%が「フェーズ分け運用をしている」と回答。昨年より0.8pt上昇したものの、一割に満たない結果となった。
フェーズ分け運用を行っている回答者に対して、どのようなクライテリアでサクセスロードマップをフェーズ分けしているかたずねた。いずれの層も「ヘルススコア(複合)とその閾値を定めている」がもっとも多く、効果を感じている層では224人中47.3%、効果を感じていない/どちらとも言えない層では47人中の51.1%という結果になった。また、効果を感じている層で42.4%、効果を感じていない/どちらとも言えない層で21.3%が「ヘルススコア(単体)とその閾値を定めている」と回答した。
効果を感じている層の多くが、成果指標を設定している
成果指標として定めているKPIについてたずねた。効果を感じている層の54.7%が「継続率/数/額」と回答し、昨年よりも2.5pt上昇。「解約率/数/額」は昨年より1.4pt減少の39.1%、「アップセル率/数/額」は昨年より2.4pt上昇の34.8%という結果になった。 一方、効果を感じていない/どちらとも言えない層では、昨年同様、半数以上の人が成果指標として定めているKPIはとくにないと回答。もっとも回答数が多かった「解約率/数/額」を見ても、設定しているのは4分の1という結果になった。
カスタマーサクセスの取り組み前後で各指標がどのように変化をしたかたずねた。効果を感じている層では「売上高が向上したと感じる」(77.2%)と答えた人がもっとも多く、昨年よりも2.6pt増。そのほかの指標についても、半数以上~7割の人が向上したと回答した。 一方、効果を感じていない/どちらとも言えない層では、いずれの指標でも向上したと感じている人は3割に満たず、また各指標を「把握していない」と答えた人が、効果を感じている人と比べて多くなった。
カスタマーサクセスのツール活用も「サイエンス」が必須
カスタマーサクセスの取り組みにおいて「サイエンス」の部分を担う「タッチモデル構築」と「フェーズ分け運用」について、これらの設定が結果に与える影響を調査した。
タッチモデルを採用している層、していない層別に、カスタマーサクセスツールの利用状況と効果体感を調査した。タッチモデルを採用している層におけるカスタマーサクセスツール利用割合は高く、また「カスタマーサクセスの効果を感じている」人が大半を占めた。一方、タッチモデルを採用していない層におけるカスタマーサクセスツール利用状況を見ると、約半数がツールを利用していないことに加え、タッチモデルを採用している層と比べて、効果を感じている人の割合が少ないことがわかった。
「サクセスロードマップに応じたフェーズ分け運用(導入/活用・定着/更新/関係深化等)」を行っている層、行っていない層別で、カスタマーサクセスツールの利用状況と効果体感を調査した。その結果、それぞれのツール導入率に対して、フェーズ分け運用を行っている層が「カスタマーサクセスの効果を感じている」割合が高いことがわかった。また、フェーズ分け運用を行っていない層の7割強は、カスタマーツールを利用していないことが明らかになった。
「タッチモデル構築」「フェーズ分け運用」の有無が業況にも影響
タッチモデルの採用の有無、フェーズ分けの運用の有無で、業況に関する指標に差があるか調査した。直近一年の売上高、利益率、新規契約数、継続率、アップセル率すべての指標において、タッチモデルを採用している層の多くが「向上した/増加した」と回答。反対に、タッチモデルを採用していない層では、各指標において「変化なし」と答えている割合も高くなった。
フェーズ分け運用の有無と業況に関する指標の関係について、「サクセスロードマップに応じたフェーズ分け運用」を行っている層の多くが、各指標において直近一年で「向上した/増加した」と回答。効果を体感している人も多くなった。一方、フェーズ分け運用を行っていない層では、「変化なし」の割合が高くなっているとともに、効果についても「どちらとも言えない」と感じている人が多くなった。
成功の鍵は「正しい顧客への販売」と「メンバーや社内への浸透」
カスタマーサクセスの取り組みを行っているすべての人に対して、効果につながったと思われる取り組みをたずねた。その結果、「正しい顧客への販売」(34.2%)がもっとも多く、「顧客の離脱防止策の実施」「カスタマーヘルスの把握・管理」(同率26.4%)が続いた。
「カスタマーサクセスの効果を感じている」層に対して、成果が出た要因をたずねた。その結果、55.8%が「カスタマーサクセスの概念がメンバーや社内に浸透したこと」と回答。次いで「ソフトウェアを導入し、有効活用できたこと」(46.4%)、「会社がカスタマーサクセスへの予算を確保/拡大したこと」(46.0%)、「カスタマーサクセスの取り組みを継続したこと」(44.9%)と続いた。
調査実施概要
「2023年カスタマーサクセスに関する調査」
- 調査方法:インターネットアンケート
- 調査実施期間:2023年3月17日~2023年3月22日
- 対象地域:全国
- 対象者:20歳から65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)2万9,237人
第四弾調査結果概要
カスタマーサクセスの取り組みが社内で行われていると回答した500人のうち「効果を感じている」と答えた層と、「効果を感じていない/どちらとも言えない」と答えた層のカスタマーサクセス運用における違いを比較