組織拡大のタイミングを見極める4つのステップ
新規事業の組織を拡大するかどうかは経営層が判断しますが、その根拠を積み上げるのは、現場にいる0→1営業の仕事です。
数々の商談結果を基に確立した「勝ちパターン」を言語化し、チームとして再現できるプロセスに落とし込めているか。事業のLTV/CAC(ユニットエコノミクス)が適切か検証できているか。これらの情報を現場で整理し「判断の根拠」として経営層へ提示するのが、事業の0→1のフェーズにおいて営業が担う最後の仕事です。
※LTV/CAC(ユニットエコノミクス):事業の採算性を把握する指標。顧客1社あたりのLTV(顧客生涯価値)をCAC(顧客獲得コスト)で割って算出する
「判断の根拠」は、感覚ではなくデータに基づいていることが重要です。「このセグメントの受注率は●%」「商談から受注までの期間は約●ヵ月」など、実績に基づくデータを蓄積・分析して初めて、「X円を投資すればY円の収益が見込める」という合理的な判断が可能になります。
図表2では、営業人員を増やすべきタイミングを判断する4つのステップを整理しました。組織拡大を判断する際は、このステップを順序どおりに達成していくことが重要です。
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たとえば「事業のLTV/CACは適切だが、『勝ちパターン』は属人的で、チームとしての再現性はない」という状態で営業人員を増やしても、頭数が増えるだけで生産性は上がりません。焦ってステップを飛ばすことが、スケールに失敗するもっとも典型的なパターンです。
「問い」を持つひとりの営業が事業を動かす
連載全体を通して、同じメッセージを発信してきたように思います。
数多くの新規事業に関わる中で、事業が軌道に乗らない企業を多数見てきました。その多くは、プロダクトの完成度でも市場の難しさでもなく、顧客接点の最前線で「この顧客が本当に困っていることは何か」「自分たちが解決するべき課題はどこにあるか」を問い続けられる人間がいるかどうかに課題がありました。
この問いを持つ人材がいないチームは、どれほどプロダクトや予算、組織体制が整っていても、必ず壁に直面します。しかし、この問いを持って動き続けられる0→1営業がひとりいるだけで、プロダクトの方向も、組織の学び方も、スケールのタイミングも、すべてが変わるのです。
AIが普及し「実行」の差がなくなっていく時代だからこそ、この問いを持ち続けられる人間の価値は上がっていくでしょう。顧客と向き合い、課題を見つけ、それを事業に変えていく人材。そうした営業の在り方を、この連載を通じてひとりでも多くの方に伝えられたとしたら、これ以上嬉しいことはありません。
