汎用ツールにはない、バーティカルSaaS特有の「高い壁」
こんにちは、イタンジのカスタマーサクセス(CS)を統括する岡田昌樹です。弊社は「テクノロジーで不動産取引をなめらかにする」というミッションを掲げ、アナログな商習慣が色濃く残る不動産業界のDXに挑んでいます。
現在、日本のSaaS市場は多種多様なサービスが溢れていますが、その多くは特定の業界に特化しない「ホリゾンタルSaaS(汎用型)」です。会計、人事、チャットツールといった、業種を問わず横断的に利用されるプロダクトは、特定の業界に特化した「バーティカルSaaS(垂直型)」に比べ、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)への難易度は相対的に低いと言えます。
我々が主戦場とするバーティカルSaaSは、不動産業界という極めて深いドメイン知識と複雑な商習慣が支配する領域に突き刺さるプロダクトです。バーティカルSaaS企業が直面する壁は、単なる「ITツールの導入」というレベルの話ではありません。そこにあるのは、「業界構造そのものを変えなければ、プロダクトが拡大しない」という極めて高い壁です。
不動産実務のアナログな真実

私たちが向き合っている不動産業界は、いまだにFAX、電話、紙の契約書が主役のアナログな世界です。
たとえば、ある賃貸管理会社のオフィスを想像してみてください。そこでは、全国の仲介会社から鳴り響く「この部屋、まだ空いていますか?」という物件確認(物確)の電話に、担当者が1日中忙殺されています。受話器を置いた瞬間に次の電話が鳴り、本来やるべきオーナー様への提案業務は後回し。デスクには山のようなFAXが届き、担当者はその情報をデータベースへ手入力し続ける……。
「効率化すれば良い」と言うのは簡単です。しかし現場には、長年築き上げた「電話での信頼関係」や「FAXという確実な証跡」といった、理屈を超えた慣習が深く根づいています。この現場の「当たり前」を解きほぐし、再構築することこそが、我々CSに課せられた社会的使命だと考えています。
バーティカルSaaS初の協会加盟と「伴走」という解
こうした変革の難しい現場において、弊社は電子入居申込や電子契約など、年間100万件以上の不動産業務のデジタル化を推進してきました。その中で痛感したのは、「システムを導入するだけでは、実質的な業務改善は起きない」という事実です。
テクノロジーはあくまで手段に過ぎません。長年積み上げられた慣習や変化への不安を払拭し、実りある運用へとつなげるには、CSによる深い伴走が不可欠です。現場の人間関係や細かな業務フローにまで踏み込み、共に汗をかく存在がいなければ、ツールは形骸化してしまいます。
この確信を背景に、2026年3月、弊社はバーティカルSaaS企業として初めて日本カスタマーサクセス協会へ参画しました。今後は同協会を通じ、不動産テック領域における「CSの在り方」をさらに追求していく方針です。私たちが作り上げる「伴走の型」こそが、日本におけるバーティカルSaaSの先行モデルとなり、ひいては日本の産業全体のDXの進展に貢献していく。それが私たちの役割であると自負しています。

