自社の成長に物足りなさを感じ、見直した営業活動
柴田氏の話は、自社の営業チームが経験したことに基づく直近1年間の取り組み内容に移る。現在、UPWARDではマーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスまで分業体制が定着し、担当者がそれぞれにKPIを持ち、共通のゴール達成に向けて活動している。マーケティングはセミナーやイベント開催でリードを発掘し、MAで運用し、十分に育成したと判断したらリードをインサイドセールスに渡す。インサイドセールスは興味度合いを引き上げる活動を行い、商談化が見込めるアポがとれたら営業に渡す。営業は訪問して商談を進め、成約したあとはカスタマーサクセスが活用定着を担当する。失注した場合も、営業がマーケティングやインサイドセールスにリードを戻す。
この仕組みが整ってからは、業績も右肩上がりに成長しているという。2016年はパートナーから商談をもらうほうが多かったが、自社でリードを育成する力をつけている。直近1年を振り返ると、売上構成における直販の比率が2年前の37%から69%に成長。とはいえ、「現在の売上成長ペースは物足りない。もっとトップラインを上げないといけない。本来のポテンシャルと比べると乖離がある」と柴田氏は現状を評価する。直販比率の伸びは自分たちでリードを発掘し、育成できるようになったことの成果であるが、成約件数が思うように伸びないことにもどかしさを感じたという。同社の場合、営業教育に力を入れ、業務効率化のツールを使いこなすことはできていた。伸び悩む原因は何かを考えた結果、改めて営業活動を見直すことにしたのだ。
なぜ営業活動を見直すのか。目指すゴールは売上を増やすこととシンプルだ。柴田氏は、その売上を構成する1つひとつの案件に紐づく個別の営業活動に視野を広げ、情報を分析しようと考えた。営業プロセスの中では、顧客の顔とファクトが見えているのは実際に訪問する営業だけである。だからと言って、マーケティングやインサイドセールスと何も共有していないわけではない。「(お客様から)こんなことを言われた」「こんな課題を抱えていることがわかった」「(お客様の)業務の流れはこう」「UPWARDのここに期待してくれている」など、実はSalesforce Chatterを使い、テキストベースではかなり多くの情報が毎日更新されていた。
柴田氏はマネージャーとして、1つひとつの案件のレビューをする際、その情報に基づき「この案件は大丈夫?」「この案件は予算を確認したほうがいい」などのアドバイスを行う。その内容は全社員と共有しているが、膨大な情報の分析ができていないことが悩みであったという。その解決のために考えたのが、営業の活動結果をシンプルにデータ化することであった。「お客様と会うことで得られる情報」「お客様と会うことで自動的に取得できるログ」、この2種類のデータを集めて分析してみようと考えたのだ。