自社にとっての「Aクラス」人材をどう採用する?
──書籍では営業マネージャーの多岐にわたる業務を「ハイアリング」「オンボーディング」「プランニングとフィードバック」「マネジメント」という4つに整理されていました。遠藤さんが日々企業を支援する中で、とくに重要だと感じるポイントを解説いただけますか?
「ハイアリング」は多くの会社にとって重要な課題で、誰を採用するか、トップのプレイヤーをいかに辞めさせずにリテンションするかが鍵です。
そのために、まずは営業マネージャーが人材採用に注力する必要があります。私が初めて営業マネージャーになったときは、ハイアリングチームに「良い人が来ません」と文句を言っていましたが、それはある意味責任放棄でした。誰をどのようなパイプラインで採用するか、考えることも営業リーダーの仕事なのです。
書籍『ビジョナリーカンパニー2』(日経BP社)にもあるように「誰をバスに乗せるか」も戦略なんですよね。今どういった人がバスのどこに乗っているかを見て、次に乗せる人を考えることも重要です。みんなが後部座席に乗っているとしたら、前に座って引っ張ってくれる人を採らなければなりません。
数字のプレッシャーを感じながらも、実は毎日悩んでいるのはメンバーとの人間関係なんてこともあるのではないでしょうか、人材採用の責任も営業マネージャーが負う、という認識を持たなければいけません。
──採用面接を業務のひとつとしてとらえている営業リーダーでも、前提となる「どういうチームをつくりたいか」という戦略は抜けてしまっているケースもありそうですね。
そう思います。また、「コーチャブルな人」を採用することも重要です。最近、支援企業のマネージャーから「メンバーから、自社の営業環境に関して“クレーム”を言われてしまう」という悩みを相談されます。そのとき私は「“それなりの成長企業で売れた”という実績だけを見て採用していませんか」と提起しています。
というのも、前職の豊かな環境と比べて「あれが足りない」と言う人は、今この場所での成長にコミットできません。限られた環境の中でも、どう自分が成長できるかを考えて行動できる人を私は「コーチャブル」な人と呼んでいて、そういった点を意識して面接できているかがポイントになると思います。
面接の際、なんとなく履歴書に目を通して質問するのは誤りです。「この人はBクラスのプレイヤーかな」と思って採用した人がAクラスのプレイヤーに変貌する、というケースはなかなかありません。自分たちの部署に求められるコンピテンシー(能力/採用基準)を言語化し、質問に落とし込んでおく必要があります。最初の入口は、意識しすぎて損はないと思います。
──打ち出の小槌はないと思うのですが……営業リーダーが「自社でAクラスのプレイヤーになれる人」を見抜くポイントはありますか。
Aクラスのプレイヤーはチャンスや成長の機会を求めている人です。そういった内発的な動機がある人は、面接官でもある営業リーダーが「今までの自分はこうだったけど、この会社に入って顧客の会社内でもエース級の方々と切磋琢磨する中で変化した成長機会を多く得られた」「営業活動の中でグローバル人材になるための生きた英語を使う機会が多くある」などと伝えると、目を輝かせてさまざまな質問をしてくれることが多いです。
また、最近は「エンタープライズセールス」への需要が高まっていますが、専門的な営業においては、経験値のある人を採用したいですよね。経験について問うと「MVPを獲得した」など、“実績”を話す候補者が多いわけですが、そのエピソードを掘り下げて「それをどう実現しているか」を聞くことが重要です。私はエンタープライズ営業として、「現状維持に固執しがちな大企業を変えた経験」があるかを見極めるために、「顧客を突破した武勇伝を教えてください」などの質問に落とし込んでいました。
ただ、これらはあくまで私の経験です。それぞれの営業組織が強いチームをつくるための採用の重要性を認識し、営業リーダー自身が採用について考える時間を設けることがもっとも重要です。
──ハイアリングの重要性を理解したでうえ、次に見直すべきポイントがあるとすれば何でしょうか。
「プランニング」と「マネジメント」ではないでしょうか。これらは、営業リーダーがもっとも時間を割くべき活動です。
目標が達成できなかったら本人に次の手を考えさせるというやり方も聞きますが、個人的には違和感があります。それではまったく間違った方向に考えてしまったり、時間がかかりすぎたりする場合もあるからです。
マネージャーがやるべきなのは、たとえば3,000万の売上を作るのにかかる時間を3ヵ月から2ヵ月に短縮するにはどうすれば良いか、適切なフィードバックをしてあげること。メンバーそれぞれのフェーズに合わせ、適切に支援する必要があります。20人くらいのメンバーを同時にマネジメントしていると、どうしてもルーティン化したくなりますが、個別にメンバーの状況を把握しましょう。
また、リモートなどではとくに、メンバーがマネージャーである自分に見せる一面しか把握できないため、周りの意見も聞きつつ、そのメンバーの成長スペースを見つけていくことが理想です。