商談率や生産性を高めるために必要な2種類のデータ
BtoB営業に必要なデータには、大きく2種類あるという。まずは、業界、売上、従業員数、設立年度、資本金などの「企業属性や企業概要データ」および、資金調達や新サービスのリリースなど、直近の「企業の経済活動情報」。もうひとつが、SFAやMAなどの営業管理ツールに入力している担当者属性情報や商談のステータス、営業のログなど、「担当者が入力する生データ」である。
「これらの情報が揃うと、どの企業のどの部署にどのタイミングで、誰にアプローチをすれば話が進むか、わかるようになります。また、自社が注力すべきセグメント領域を容易に算出できるようにもなります」(中嶋氏)
企業におけるデータの収集に関しては、後者の担当者がSFAなどに日々入力するデータは自力で充実させることができるが、前者の企業属性/活動データを充実させることの難易度は高い。法人登録されている企業数は約550万社あり、これらすべての企業について注力事業や売上高、従業異数をもれなく収集し、一定期間で更新し続けるのは非現実的である。
ただその高い壁さえ乗り越えれば、データの掛け合わせや意思決定の精度を飛躍的に高められるようになるという。 「データをもとに判断をする活動が組織として仕組み化できれば、無駄な動きをせずに済み、(商談率などの)歩留まりや生産性を飛躍的に高めることができます」(中嶋氏)
データ基盤を構築する際に実施すべき3つの項目
しかし実際は、85%の営業担当者が「現場はデータ不足」と感じているという。では、どう対処すべきか。中嶋氏はデータ基盤を構築するうえで実施すべきこととして、「企業データのリッチ化(データの拡充)」「データをもとにしたより深い分析」「データを整理して“使える状態”にしていく」という3点をあげる。
まず企業データのリッチ化とは、担当者がSFAやMAツールにさまざまな企業の情報を入力した結果、「会社名や一部の情報だけが入っている」という状態になってしまっている企業データを補強することだ。データの整備が完了したら、複数項目のデータを用いて深い分析ができる仕組みを構築する。そのうえで受注率が高い新たなセグメントの発見や、複数データを組み合わせて新しいデータとして営業組織に活用できるようにする。同時に、表記ゆれや複数のSFA、MAへの情報の重複入力をなくしていく。
「データを使えるようにするためには、ひとつの正しいデータに統合する必要があり、それがデータ基盤を構築するうえで重要なポイントになります」(中嶋氏)
またデータを収集する際には、どのようなデータを収集するかによって正しい意思決定ができるか、AI活用時に正しい答えが返ってくるかが変わってくる。とくに「網羅性」「鮮度」「正確性」の3つが欠如すると正しい意思決定ができなくなり、AIを活用する際にも間違った判断をする可能性があると中嶋氏は指摘する。
「網羅性が欠けると意思決定に偏りが生まれ、鮮度が欠けると売上や事業内容が変わっていたり、電話がつながらなかったりします。正確性が欠けるとデータ分析のやり直しや歩留まりが改善されないなどの問題が生じます。ただデータを集めても生産性は上がりません。3つの要素が備わったデータを集める必要があります」(中嶋氏)
データを集める際の手段としては、「①人を増やしてデータ収集に充てる」「②自社でスクレイピングする」「③データ整備まで完了している企業DBを活用する」という3パターンがあるという。ただ①と②は難易度が高く、時間と人件費、開発コストがかかる。そこでデータを集めるにあたって中嶋氏が勧めるのが③、つまり「SalesNow」の活用である。