BtoB営業・マーケティングにおけるAI・データ活用の目的
SalesNowは、大手からスタートアップまで700社以上の導入実績を誇る企業DB「SalesNow」と、国内最大級の企業DBメディア「SalesNow DB」を運営し、BtoB営業・マーケティング組織のデータ活用を支援している。
同社で事業開発を担当する中嶋氏は、BtoB営業・マーケティング領域におけるAIやデータ活用の目的を、「営業活動における投資対効果を最大化すること。とくに自社の顧客セグメントを特定し、歩留まりや生産性を引き上げることが大きな目的になる」と解説する。具体例として、最適な顧客セグメントの特定や潜在ニーズの顕在化、その際の早期アプローチなどが挙げられた。
ただし、それらの目的はAIを導入するだけでは成し得ない。AIはあくまでデータを処理する機能であり、もとになるデータが必要になる。AIの導入が先行してしまうと、将来的に「データ基盤の構築」という問題に悩まされる。AIを活用して生産性を高めていくためには、まずはデータ基盤を構築することが重要なのだ。
中嶋氏は、AIを活用する際のデータの役割を「意思決定の基準づくりや傾向の言語化をするために必要な材料」と定義し、営業組織全員で正しい意思決定をしていくためには、仕組みとして正しいデータの確保が必要になると説く。
「たとえば、過去3年で業界Aのほうが業界Bよりも受注率が高ければ、今期の営業戦略として業界Aに注力しようと判断できますが、そう判断できるのは正確な業界のデータを収集したうえでデータを正確に付与できているからです」(中嶋氏)
商談率や生産性を高めるために必要な2種類のデータ
BtoB営業に必要なデータには、大きく2種類あるという。まずは、業界、売上、従業員数、設立年度、資本金などの「企業属性や企業概要データ」および、資金調達や新サービスのリリースなど、直近の「企業の経済活動情報」。もうひとつが、SFAやMAなどの営業管理ツールに入力している担当者属性情報や商談のステータス、営業のログなど、「担当者が入力する生データ」である。
「これらの情報が揃うと、どの企業のどの部署にどのタイミングで、誰にアプローチをすれば話が進むか、わかるようになります。また、自社が注力すべきセグメント領域を容易に算出できるようにもなります」(中嶋氏)
企業におけるデータの収集に関しては、後者の担当者がSFAなどに日々入力するデータは自力で充実させることができるが、前者の企業属性/活動データを充実させることの難易度は高い。法人登録されている企業数は約550万社あり、これらすべての企業について注力事業や売上高、従業異数をもれなく収集し、一定期間で更新し続けるのは非現実的である。
ただその高い壁さえ乗り越えれば、データの掛け合わせや意思決定の精度を飛躍的に高められるようになるという。 「データをもとに判断をする活動が組織として仕組み化できれば、無駄な動きをせずに済み、(商談率などの)歩留まりや生産性を飛躍的に高めることができます」(中嶋氏)
データ基盤を構築する際に実施すべき3つの項目
しかし実際は、85%の営業担当者が「現場はデータ不足」と感じているという。では、どう対処すべきか。中嶋氏はデータ基盤を構築するうえで実施すべきこととして、「企業データのリッチ化(データの拡充)」「データをもとにしたより深い分析」「データを整理して“使える状態”にしていく」という3点をあげる。
まず企業データのリッチ化とは、担当者がSFAやMAツールにさまざまな企業の情報を入力した結果、「会社名や一部の情報だけが入っている」という状態になってしまっている企業データを補強することだ。データの整備が完了したら、複数項目のデータを用いて深い分析ができる仕組みを構築する。そのうえで受注率が高い新たなセグメントの発見や、複数データを組み合わせて新しいデータとして営業組織に活用できるようにする。同時に、表記ゆれや複数のSFA、MAへの情報の重複入力をなくしていく。
「データを使えるようにするためには、ひとつの正しいデータに統合する必要があり、それがデータ基盤を構築するうえで重要なポイントになります」(中嶋氏)
またデータを収集する際には、どのようなデータを収集するかによって正しい意思決定ができるか、AI活用時に正しい答えが返ってくるかが変わってくる。とくに「網羅性」「鮮度」「正確性」の3つが欠如すると正しい意思決定ができなくなり、AIを活用する際にも間違った判断をする可能性があると中嶋氏は指摘する。
「網羅性が欠けると意思決定に偏りが生まれ、鮮度が欠けると売上や事業内容が変わっていたり、電話がつながらなかったりします。正確性が欠けるとデータ分析のやり直しや歩留まりが改善されないなどの問題が生じます。ただデータを集めても生産性は上がりません。3つの要素が備わったデータを集める必要があります」(中嶋氏)
データを集める際の手段としては、「①人を増やしてデータ収集に充てる」「②自社でスクレイピングする」「③データ整備まで完了している企業DBを活用する」という3パターンがあるという。ただ①と②は難易度が高く、時間と人件費、開発コストがかかる。そこでデータを集めるにあたって中嶋氏が勧めるのが③、つまり「SalesNow」の活用である。
全国企業の基礎データを網羅し独自情報も備える「SalesNow」
「SalesNow」には、大きく5つのポイントがあるという。
ひとつめは、「使えるデータ量の多さ」。前日時点で法人登録されているすべての企業のデータをリアルタイムで更新し、1社あたりのデータ付与率も高い。地方のSMB企業も完全網羅しているため、全国に網羅的に営業をしていく際にも効果を発揮する。
ふたつめは、「データの鮮度」。競合他社と差別化するには、いかに新しい情報を収集してアプローチをかけられるかが重要になるが、230万件以上の情報を日次で更新しているため、鮮度が高い情報の中から分析・ターゲティングができる。
3つめは、「データの種類の豊富さ」。利用企業のビジネスモデルや事業内容によって扱うデータは異なるため、それぞれに合わせたデータを用意している。企業の経済データの情報や従業員数も毎月更新しているので、任意の期間における従業員数の増減データなども計れるほか、通常では生成困難な独自データも豊富に用意しているという。
4つめは、「シンプルな操作感」。営業組織でツールを活用する際、ツールの操作が難しく現場での運用が進まないケースが散見されるが、新入社員でも操作できるような感覚的なUIを備える。
5つめは「データの質」。企業版WikipediaのようなSalesNow DBという独自メディアを運営し、そこから独自でクローズデータをユーザーから収集しているため、実際に公開されていないデータも備わっている。
それらに加えて、各種SFAとの連携やデータ連携APIによって自社でスクラッチ開発したシステムとも連携でき、DBにデータを補強することもできる。
「『網羅性』『鮮度』『正確性』をしっかり押さえているので、BtoB営業やマーケティング領域におけるデータ基盤の構築に役立てることができます。現在、与信情報を収集しスコア化する機能も実装中です」(中嶋氏)
「SalesNow」の活用例としては、「新規開拓」「顧客の掘り起こしや追加提案の強化」「データ基盤の整備やデータ分析」「企業情報収集の効率化」が多いとのこと。
とくに成果を上げているユーザーが多いのが「顧客の掘り起こしや追加提案の強化」で、問い合わせは「データ基盤の整備やデータ分析」に関するものがもっとも多いという。
セッションの結びの言葉として中嶋氏は、BtoB営業・マーケティングにおけるデータ活用の3つのポイントを整理した。
「AIを活用する前にはデータ基盤の構築が必須です。データを収集する際には、網羅性と鮮度と正確性を重視してください。必要なデータカテゴリーは『企業データ』と、営業担当者などが収集する、生の『担当者データ』があります。必要なデータを集める仕組みをつくる作業は難易度が高いものですが、企業DBの『SalesNow』を用いると実現可能になります。当社ではDB以外にも複数のサービスを提供しており、AI時代のBtoB営業・マーケティングの生産性向上を支援します」(中嶋氏)