「プレセールス」の役割と、営業への「伴走支援」が連携の鍵に
──営業との連携について、具体的な取り組みを教えてください。
「受注」というゴールを決めるのは営業ですから、マーケティング部は「バトンをつなぐ」という姿勢で臨まなければ、新規案件の創出は実現しません。だからこそ、チームとして営業との連携を意識しました。
具体的な仕組みとして、マーケティングファネルとセールスファネルをつなぐ「プレセールス」という役割を設けているのがポイントです。マーケティング部が創出したリードを、製品の選定・見積もり提出の段階まで育成してから営業に引き継いでいます。
──リードに対する認識の違いなど、すれ違いやコンフリクトもあったのでしょうか。
ファネルが違うと見えるものも違いますから、やはり認識の違いは起こります。たとえば、展示会やSEO対策で集めた膨大な情報から、さまざまなキャンペーンを経て20件までリードを絞ったとします。しかし、そのすべてが商談化することはまずありませんから、営業からすれば「求めるリードではなかった」という印象になってしまいます。マーケティングが考える「良いリード」と、営業の「欲しいリード」はイコールではありません。こうした認識のギャップがあることを理解したうえで、リードの押し売りになっていないかどうかは意識していますね。
──ファネルの違いによるギャップを埋めるためにも、プレセールスは重要な役割を担っていると思いました。
実はプレセールスも、「リードがフォローされないのはもったいない」という課題感から生まれたんです。元営業のメンバーがリードの深掘りを始め、成果が出てきたことで仕組みとして定着しました。
しかし、仕組みがあるだけでは人は動きません。そこでマーケティング部では、営業を「お客様」、マーケティング活動を「提供するサービス」ととらえて活動しました。たとえば架電リストの作成を依頼されたら、「マーケティングキャンペーンを実施して精度を高めたほうが良いのではないか」と思っても、まずは営業の要望を尊重しすぐにリストを作成して提供します。ほかにも社内の営業に向けて「こんな課題はありませんか」「おすすめの営業手法を紹介します」といったメルマガ配信を行ったところ、営業から相談や賛同を受けるようになりました。
このように、お客様として営業に寄り添い伴走支援してきた結果として、営業部の「UPS新規拡販チーム」とタッグを組んで活動するようになりました。ターゲット設定からコンテンツ作成やキャンペーン企画などを話し合うなど密な連携を実現できたことも、今回のプロセス改革で成果が出た要因だと思います。
新規案件創出金額が5倍! 既存業務に“溶け込む”変革を実現
──仕組みの構築と伴走支援を経て、今回のプロセス改革による成果を教えてください。
2022年と比較して、2023年はUPSの新規案件創出件数が2.4倍、金額が5倍に向上しました。また、SFAに「きっかけ:マーケティング」と登録された商談数が7倍に増加したのも成果のひとつです。リードを引き渡したあと、案件化するまでに営業が何度も訪問や架電する必要が生じると「マーケティングがきっかけ」とは判断されません。プレセールスが見積もり提出段階までリードを育成してから引き継ぐことで、マーケティングがきっかけだと認識される商談が増えたのだと思います。マーケティング部として新規案件の創出を目指すうえで、大きな変化ですね。
定性的な面では、営業から「効率的になった」という声が挙がっています。新規開拓は長期的で地道な活動が必要ですが、忙しいなかではチャンスを逃してしまうことも。そこに私たちマーケティング部が介入したことで、営業から「必要なときに最適なオプションを提案してもらえた」という反応をもらっています。これは、既存業務の中に自然に溶け込むような改革を心がけたのが功を奏したのではないかと思っています。たとえば従来の営業活動でも見積もりは提出していますから、新たにプレセールスを置いても、違和感なく受け入れてもらえました。