ヒアリング、型どおりの提案では顧客は動かせない
──おふたりは「仮説」をテーマに書籍を出版されていますが、営業において仮説が重要な理由や背景からうかがえますでしょうか。
城野(JOENパートナーズ) 昭和から平成初期の時代は、今ほど仮説は重要ではなかったはず
しかし、時代が変わるにつれて顧客が持つ課題やニーズが複雑化し、新しい製品やサービスも次々に生まれています。そんな中、顧客自身も何が課題がわからない、あるいは優先順位がつけられなくなっているのです。
このような時代においては、顧客の潜在的な課題・ニーズが何なのかを営業が考えて提案する「仮説提案」が求められます。これができなければ、売ることはおろか、案件化すら難しい時代になってきていると思いますね。

株式会社JOENパートナーズ 代表取締役社長CEO/営業人財育成コンサルタント 城野えんさん
慶應義塾大学出身。グローバルIT企業のトレンドマイクロにて、新製品受注件数1位を達成。国内外で新規顧客開拓や協業立ち上げを経験し、独立。大手IT企業を中心に「仮説提案営業」をベースとしたフルカスタマイズ研修を提供。多数の企業で成約率が2倍になるという成果が続出している。『成果に直結する「仮説提案営業」実践講座』(日本実業出版社)著者
鈴木(Datable) 私も「時代の変化から仮説が重要になってきている」というのはまさにそのとおりだと思います。
仮説が重要な理由は「型と仮説の違い」からも語ることができます。営業には「型をマスターする」という段階がまずありますが、型は一般化されたものですから“それぞれの顧客に対して型がある”わけではありません。つまり、型は顧客起点でつくられるものではなく、どちらかというと営業(売り手)起点で、営業が話したいことを中心につくられるものなんですね。
もちろん売り手が提供できる価値を伝えることは重要ですから、型どおりに提案することも最初は必要です。しかし、顧客起点で“本当にお客様の役に立つ”営業をしようと思うと、型どおりに提案するだけでは不十分。顧客によって課題は異なり、決まった答えがあるわけではないため、「顧客の課題を営業自らが考える=仮説を立てる」必要があるのです。

株式会社Datable VP of Sales 鈴木眞理さん
キーエンス、SAP、OPENTEXTにて主にエンタープライズ向けの営業に従事したのち、freee株式会社に入社。大規模会計事務所向けチームのマネージャーとして営業/導入コンサルティングに携わったのち、同社IPO事業部マネージャーとして同事業部の立ち上げを担当。2022年10月Datableに参画。著書に、『仮説起点の営業論 セールス・スキルを磨くたった1つの方法』(KADOKAWA)がある