営業は「明るく元気であるべき」という常識
思い込みはダメだと言っておきながら、私自身も長い間「営業とはこうあるべし」と思い込んで仕事をしていました。上司から「明るい人と暗い人ではどちらに会いたいと思う? 明るい人だろう。だからもっと笑顔で訪問しなさい」と言われて、それを疑うことなく、家で鏡を見ながら笑顔をつくる練習までしていたのです。
そもそも採用担当者も、営業職の採用では明るく元気な人を選びがち。応募者も「自分の陽気な性格は営業に向いている」と思って営業を選ぶ人も多いでしょう。明るく元気な性格の人が営業に向いているというのは、疑う余地のない常識としてとらえられてきました。そこが問題なのです。
私がリクルートに在籍していたころ、元気の良い新人が入ってきました。おそらく当人も、自分は営業に向いていると思っていたでしょうし、私たちも「こいつは売れるようになる」と思っていました。
ところが、彼はまったく売れませんでした。持ち前の明るさを前面に出して営業しているにも関わらず売れなかったのです。人前では元気に振る舞っていましたが、内心では思い悩んでいたようです。当時の私はまだ「売れる営業=明るく元気」と思い込んでいたので、彼に何のアドバイスもできませんでした。
その後、彼は半年で辞めていきました。営業としての自信を無くした彼が今どうしているのかと思うと、心が痛いです。
誰もが常識としてとらえていることに疑問を持つのは非常に難しいことです。しかし、気づいている人もいるはずです。明るく元気なだけでは売れないということに。もし明るく営業すれば売れるのなら、陽気な性質の人だけを集めてしまえば売上の心配などなくなるでしょう。指導や教育もかんたんです。売れなかったら「明るさが足りない」と指導するだけで済みますからね。
しかし、現実は違います。まずは「明るく元気なだけでは通用しないみたいだ」と問題意識を持つことが大切です。