入社10日めに新システム導入 DX急務の背景とは
新田(Sansan) 山口さんは2019年に日本ユニストに入社された直後から、社内の営業DXを推進されてきたとうかがっています。
山口(日本ユニスト) 前職でシステム開発に長く従事していたので、その経験を買われてDX推進のポジションで採用されました。そして、入社直後に社長から「営業生産性を5倍に」というミッションを与えられまして。前職で培った知識や経験を活かしながらITツールの導入や運用定着を進めています。
新田 営業生産性5倍。すごい数字ですね。
山口 不動産会社で営業DXを実現しようと思うと、そのくらい大きな数字を掲げる必要がありました。不動産業界自体DXが遅れていて、DXの「D」の字も知らない、IT化の「I」の字も知らないような不動産屋も多い。また、物件ごとに情報が個別化されているため、営業活動が属人的になりやすいという課題もあります。
私の入社当時も属人的な営業活動が常態化しており、ひとりのトップセールスだけが大きな成果を出している状況でした。それでは組織全体の成果は頭打ちになってしまいます。メンバー全員の成果を底上げするには、営業プロセスの仕組みごと再構築しなければならなかったのです。
そこで、現場にもヒアリングしながら「DXマップ」をつくりました。300~400ページくらいの説明資料も作成して「このツールを入れる理由は〇〇で、このような機能があり、導入後の効果は……」というプレゼンを10日間かけて社内に行いました。アナログな気質が強い業界にIT業界の人間が入っていくわけですから、居場所をつくらないといけないし、成果も挙げなければいけないしで必死でしたね(笑)。
新田 これをおひとりで進めていったと。かなり根気のいる仕事ですね……。構想を立てる際に意識したポイントをうかがえますか。
山口 組織の中でもっとも大事なのはコミュニケーションだと考えていたので、コミュニケーション基盤の整備は最初に着手すると決めていました。当時の営業はさまざまなチャットツールやメッセージツールを使っており、顧客や社内とのやりとりが散在している状況。重要なやりとりを探し出すのにも時間がかかることがあって、「これはまずいな」と。そこで私が入社して10日めに、最初のツールとしてSlackを導入しました。
新田 初動が早い。導入後、どのような変化がありましたか。
山口 バックオフィスはほぼすべてSlack上で完結できるようになり、物件情報などの共有がスムーズになりました。
社内コミュニケーションの量も確実に増えたと思います。直接対面で話す機会が少なくなったぶん、オンラインできちんとコミュニケーションをとろうという方針を立てたんですよ。営業部では、営業部長がSlackで部下1人ひとりのチャネルをつくり、部下に進捗報告や困っていることなどをリアルタイムで報告してもらう「分報」を取り入れました。コミュニケーションの頻度が多いほど価値観のすり合わせもできますし、マネジメントもしやすくなっていると思います。
なかでもとくに大きかった変化は、情報共有の基盤ができたことで「人脈も成果もみんなでシェアしましょう」という体制を整えられたこと。実はそのときに人事制度も切り替えまして、インセンティブ制度を廃止したんです。