営業DXとは
営業DXとは、データやデジタルツールを活用して自社の営業戦略を見直し、営業プロセスや営業体制を再構築することです。例えば顧客育成にMA(マーケティングオートメーション)ツールを活用し、自社の利益につなげることも営業DXの1つです。
長年にわたり、営業は「足しげく顧客を訪問する」「営業成績は個人のスキル次第」など、非効率的かつ属人的なスタイルで行われていました。
しかし近年はデータやデジタルツールの登場により「データ分析による顧客ニーズの把握」「データベースによる顧客情報の共有」などの効率的・非属人的なスタイルに変化。さらに現在はMAツールの導入やAIを活用したビッグデータの解析なども可能になっています。
覚えておきたいのは、どれだけ優れたデータやデジタルツールを活用しても、営業活動の最適化を通して競争力の優位性につなげられなければ、営業DXとは呼べないことです。自社の利益につなげるため営業DXを推進していきましょう。
営業DXが必要な理由
営業DXが必要とされる3つの理由について解説します。
働き方の変化
少子高齢化や人々のニーズの多様化、そして新型コロナウイルス感染拡大などの影響から働き方に対する意識は大きく変化し、時短勤務やテレワークなどにより柔軟な働き方が求められています。さらに今後、生産年齢人口がますます減少することからも、より少ない人数で成果を挙げる方法として営業DXの重要性は高まるはずです。
生産性の向上
営業DXを推進する過程で多くの業務がデジタル化され、それが業務フローの効率化へ、そして生産性向上へとつながることが期待されています。例えばコロナ禍の影響もありオンライン商談ツールを導入したところ、訪問営業時の1日3件程度から倍の6件まで増やせたという事例がありました。2023年6月現在、外出制限はほぼありませんが、営業活動の効率化が利益増につながるのであれば、今後もツール活用が続く可能性は大いにあります。
コスト削減
営業DXは従来の営業スタイルでかかっていたコスト削減にもつながります。「生産性の向上」でお伝えした営業のオンライン化を例に挙げると、顧客先までの移動時間や交通費、場所によっては出張費、宿泊費などのコストまで削減できることになるのです。
営業DXの導入方法
ここでは、営業DXを導入するための流れを具体的に見ていきましょう。
課題の洗い出し
まず、自社がどんな課題を抱えているかを徹底的に洗い出します。例えば「新規開拓ができていない」「リピーターが育たない」「Webからの問い合わせが少ない」などです。その中から営業DXで解決できる課題を抽出します。
チーム作成
営業DXの推進には営業部だけでなくマーケティング部、さらにツール導入時にはIT部など、複数の部が関わります。営業DXを進める際には、関わる部からメンバーを募ってチームを作成すると、特定の分野に偏った見方を防げます。ただ、中心となるメンバーには営業企画や営業推進など、営業の現場を知る人材を選ぶのがおすすめです。
実現したい姿の定義
続けて、営業DXによって実現したい姿を定義します。例えば「クライアントの課題解決に向け、提案の精度を上げる」などです。さらに、理想とする姿の実現(ゴール)までのロードマップも作成してください。その際はKPI(重要業績評価指数)として「1年以内に新規顧客を20%増やす」など、具体的な数値で表現しましょう。
ツール導入
目指す姿が決まったら、その実現に役立つツールを選定・導入します。例としてMAツール、SFA(営業支援)ツール、CRM(顧客管理)ツールなどが挙げられます。ここでIT部のメンバーに協力を仰ぎましょう。その際は、業務効率化の観点から「モバイル端末と連携できるもの」を選択してもらいましょう。
効果検証
営業DXに欠かせないのが効果検証とPDCAです。検証する時はまずリード数、受注率などの指標を抽出してボトルネックを特定します。営業のプロセスごとに追う指標を定義するとスムーズなボトルネックの特定につながります。
営業DX成功のポイント
営業DXを成功させるために意識しておきたい4つのポイントをご紹介します。
目的の明確化
「なぜ営業DXを行うのか」という目的を明確化し、推進チームはもちろん全社でその目的を共有しておきましょう。例えば「リード獲得の効率化」「優良顧客の増加」などです。「流れに乗り遅れないため」「上層部の命令だから」などの表面的な理由では、望む効果が得られず失敗する恐れがあります。
営業プロセスの見直しと再構築
課題を抱えた既存の営業プロセスに優秀なツールを組み込んでも、おそらく営業DXは成功しません。まず営業プロセスの見直し・再構築を行ってから、目標の達成に必要なツールを選定しましょう。
人材育成
営業DXを推進するためには、自社の商品・サービスと営業、そしてデータやデジタル技術に関する深い知見を持ち、さらにそれらを使って営業改革を行える人材が欲しいところです。外部から招く方法もありますが、やはり理想は社内で育成すること。人材育成として下記の方法を参考にしてください。
- ITリテラシーが高い社員を登用する
- 座学でDXに必要なスキルやマインドセットを学ばせる
- 社内プロジェクトのメンバーとして、OJTを行う
- 社外ネットワークを作る環境を与える
最適なツールの選定
達成したい目標に適したツールを選定しましょう。管理職やIT部だけでの決定は避け、実際に利用する現場の営業社員の意見を積極的に取り入れてください。
営業DXの今後は?
2030年度におけるDXの国内市場は、6兆5,195億円(2021年に比べ約2.8倍)と予測されています。またDXの取り組みを開始している企業は67.8%、今後3年以内に取り組み開始の計画がある企業は13.4%と、DX化の進展は顕著です。ここでは現在注目されている先端技術が、今後営業DXに活用された際の進展について考えます。
(出典)『2023 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編/ベンダー戦略編』まとまる/富士キメラ総研
AI
AIは大量のデータをスピーディに読み込んで分析します。分析結果を営業計画や実際の営業活動、さらに管理などに活用すれば、意思決定のスピードや業務の生産性が著しく改善され、業績に大きな影響をもたらすと考えられます。例えば営業計画の際は特定の市場で売れる商品をAIに提案させる、また営業活動ではより受注につながりやすい方法をAIがサポートするなどの利用法があります。
AR/VR
顧客に対して視覚的に商品イメージを伝えられるAR(拡張現実)や、仮想的な空間を現実のように疑似体験できるVR(仮想現実)を活用すれば、成約率向上や売上拡大の実現への効果が期待できます。例えば大型機械を商談の現場に持っていくと時間や商品設置のコストがかかりますが、ARを使えばそれらは必要ありません。
IoT
例えばメーカーが自社商品のIoT(モノのインターネット)化を図れば、収集された多くの顧客データを新製品開発やアフターサポートの向上などに役立て、商品・サービスの改善につなげることができます。IoTで得たデータ・知見が企業のビジネス基盤を強化し、持続的な成長が期待できるでしょう。
まとめ
データやデジタルツールを活用した営業戦略の見直しによって、営業プロセス・営業体制を再構築し、競争の優位性に繋げる営業DX。導入の流れは今後、さらに加速することは間違いありません。これから営業DXに取り組みたいという方は、本記事の「営業DXの導入方法」を参考に、まず課題の洗い出しから始めてみてください。