倒産の危機にあった10年前の明和工業
福井県に本社をおく明和工業は、山の崩壊修復や予防を行う「法面工事」をメインに扱っている。業務の約80%を一次下請として請け負っているため、元請への営業活動は欠かせない。
「皆さんに最初に言っておかなければならないことがあります。10年前まで、この会社はいつ倒産してもおかしくない状況でした」(土本氏)
Salesforceを導入する以前の明和工業には、データ管理について次のような課題があった。
- 資料はすべて共有サーバーに保存。閲覧の際は、どこに保存されているか探す必要がある
- データが最新かどうか、作成者にしかわからない
- 重要案件など前月の内容が次月の資料に反映されていない
- 同じ内容のデータを複数の部門で作成しており、どれが正確か不明
- 都合が悪い案件は削除、または目立たないよう記載して資料を作成していた
- 営業部員や工事部員が本来の業務ではなく資料作成に多くの時間を割いていた
このような状況下で土本氏は、数字の見方やデータの重要性、マーケティングの必要性を実感し、データの一元管理を目指すも、明和工業の業種や体制に適したツールはなかなか見つからなかったという。
そんなときに参加した福井ITフォーラムで、Salesforceのブースを見つけた土本氏。Salesforceの導入によって現状を劇的に変えられるかもしれないと直感し、後日、詳細について紹介してもらう機会を設けた。
Salesforce導入とIT人材の採用を強行突破
働く社員が場所や時間を問わずに入力・閲覧でき、カスタマイズも可能だという点以上に土本氏が魅力を感じたのは「情報がリアルタイムに入ってくる」ことだ。しかし、Salesforceを使いこなすまでには、ふたつの壁があった。
ひとつは導入の壁。決して安くない費用をかけてまでSalesforceを導入することに疑問の声が挙がった。実際、役員層からは現状の顧客管理、つまり住所録や名刺ファイルで十分だという意見も出てきたという。
「従来の顧客管理では、情報共有の難易度が非常に高いです。これまで、自分たちはこういう状態でビジネスを行ってきたのだなとあらためて実感することとなりました」(土本氏)
ふたつめは、定着の壁。これまでも管理ソフトを導入したことはあったが、何ひとつ会社に定着しなかった。
こうして2ヵ月にわたり周囲から反対されたのち、土本氏は強行突破を決意する。同時に、専属のIT人材の採用も決意した。当然、経験者を採用するのが良いだろうと、ホームページ管理やクラウド管理の経験者を募集することにしたという。
しかし応募してきたのは、当時専業主婦をしていた未経験者のN村さん。不安はあったものの、「絶対に、Salesforce活用を成功させる」と豪語していたこともあって、とにかく進めるしかないと採用を決めた。Salesforceのサポート体制や自己学習システムを活用し、できることが増えるたびにN村さんとSalesforceを褒めたたえながら3ヵ月、N村さんはひとりでもかんたんなカスタマイズができるようになった。