高い水準が「あたりまえ」な営業組織との出会い
──Buffを立ち上げるまでの中内さんのキャリアについて教えてください。
新卒でDeNAに入社し、ゲームプランナーとして2年半ほど経験を積みました。ユーザーがより楽しめるような施策や、ゲームタイトルの売上を上げる方法を考える役割です。よって私自身は営業出身ではないのですが、ある営業パーソンとの出会いがきっかけで、「営業組織を科学する」ことに強い可能性を感じ、現在の事業領域で起業することを決めました。
──note「営業の『売る』と同じくらい大事なもう一つの役割」を執筆されるなど、営業組織向けの発信も精力的に行っていらっしゃいますね。
「売れなかったお客様」からのニーズを得られるのは営業だけです。売上を上げることはもちろんですが、ニーズを吸い上げ、将来の製品開発につながる情報を取得する市場調査も、営業のもうひとつの重要な役割であることを伝えたくて執筆しました。
先ほどお伝えした営業パーソンが属していた組織では、まさにそういうことが日常的に行われていました。お客様のニーズを吸い上げ、なかでも売上につながりそうなものを選定して全社に共有する。しかも、ただニーズを伝えるだけではなく、「どんな機能があればお客様はその課題を解決できるか」「その機能にお客様はどんな価値を感じ、どれくらいの価格を払ってくれだろうか」──たとえば「この機能がなくて、会社の○○の仕組みが止まるとこの程度の損失が出るだろうから、これくらいの値づけで納得感があるだろう」というように具体的な考えに落とし込んでいくんですね。
その会社は、後発で参入した領域でもビジネス展開をしていたのですが、高い商品力で周囲をぐんぐん抜き去って業界ナンバーワンも獲得していました。彼らの取り組みからも「営業起点で商品力が上がる」、非常に重要な役割だとあらためて認識したのです。
──提供事業として「営業コンサル事業」「Sales Tech事業」ふたつの柱を据えた経緯をうかがえますか。
目指すのは「成長を楽しめている人が増える」世界です。人や組織の成長に強い関心があった私にとって、先ほどの営業組織は非常に興味深く、夢中で研究をしたのを機に、ほかの営業組織の研究も行い、その成果が「コンサル事業のプログラム」につながっていきました。
成長し続ける組織は、SFAの記録の粒度や営業時の些細なトークポイントなど「これはあたりまえにやるよね」という「常識」が数百・数千人の組織でもしっかり浸透しているんです。たとえばコロナ禍以前ですが、アポの水準は「1日に9件」。外から見るとすごいのですが、中の人たちは普通だと思っているんですね。
組織の水準を一定ライン以上に上げるための手段は「優秀な営業パーソンを採用する」ことだけではありません。どのような組織でも実現可能ですし、その根底にあるのは成長のための仕組みを組織でつくり上げていく「文化」だと気がつきました。そこで、文化が根づくための仕組みやルールを研究した結果をプログラムに落としていったのです。
完成したプログラムを、課題を抱えていた知り合いの営業組織に提供させてもらったところ、3ヵ月でひとりあたりの売上が3倍にまで伸び、プログラムの価値を認識できました。その中で既存のSales Techを活用したのですが、どうしても解決できない課題もあったため、Sales Techの開発も行い、現在の2本柱で支援を提供するに至りました。