新型コロナウイルスがもたらした「3つのロス」
――まずは自己紹介をお願いします。
田中 Marketing-Robotics代表取締役、田中亮大です。BtoBのセールス・マーケティングの業界には10年以上おりますので、みなさんのお役に立てるようなお話ができれば幸いです。
今井 セレブリックスの今井晶也です。企業の営業活動へのコンサルティングを行っています。さまざまな営業組織を支援していく中で、膨大な「成功事例」「失敗事例」が会社の中で蓄積されていますし、当社自身もさまざまな企業のシステムを活用した営業活動を行っているため、成果向上のための知見やノウハウを皆様に共有できればと思っております。
――「デジタル営業」というワードにはさまざまな解釈があるかと思います。営業歴の長いおふたりが考える「デジタル営業」の定義を教えてください。
今井 「デジタル営業」に対する考え方は大きくふたつあると思っています。ひとつは「デジタルツールを駆使して営業活動に活かすこと」。もうひとつは、営業パーソン1人ひとりが「デジタルマーケティング脳を持った営業活動を実践すること」です。
田中 意味合いは広いですよね。iPadが普及し始めたころは、 顧客への資料を iPadで見せることも「デジタル営業」と言えました。しかし、昨今語られる「デジタル営業」はそうではなく、「オンライン」という言葉が肝であるように感じています。営業パーソンが、オンライン上にあるデジタルデータをどのようにして営業活動で活用していくか。これこそが世間の考える「デジタル営業」に近いのではないでしょうか。
今井 おっしゃるとおりだと思います。僕は、新型コロナウイルスが我々にもたらした環境の変化を「つながらない」「会えない」「買ってもらえない」の「3ロス」と呼んでいます。
この3つのロスを踏まえて、従来までは直接電話をかけていたところにデジタルを活用した新しいコミュニケーションを行うようになるなど、「オンラインで顧客開拓を行う」動きは加速しています。世間でも、「デジタル営業」への関心が高まっているように感じます。
田中 僕が少し疑問を感じているのは「デジタル営業=会わない」という図式です。「会わない」ことがデジタル営業の絶対条件とされる風潮には懐疑的になってしまいます。
一例ですが、「ウェブサイトを見てくれたかどうか」「何日前から見てくれていたのか」「どのページを何回見ているのか」などといったクライアントの閲覧データ情報は、対面・非対面にかかわらず有用性が高いですよね。このように、対面の商談であったとしても、オンラインの力は営業活動をプラスに導きます。「会わないためにどうするべきか」「会えないからどのようにデジタルを使うのか」という視点もよいですが、「会わない」ことは決して絶対条件ではないように思います。