コロナ禍で営業活動のハードルは高く……ミスマッチをなくしたい
――支援されている営業組織の皆さんはどこに課題を抱えていらっしゃいますか。
どの企業も新規アポイントの獲得に困っていらっしゃいますね。企業はこんな状況でも売上をあげる必要がありますから、是が非でもと新規営業をしています。購買者側からすると、メルマガや新規のテレアポを受ける機会は急増しており、ライバルが多いなかで営業が商談機会をつくるのが難しくなっています。また緊急事態宣言下では、多くの企業でテレワークも進み、社会状況がいつどう変化するかわからない状態で、営業が電話をかけるよりも、メールの営業やオンラインセミナーの実施を優先し始めた企業も多かったのではないでしょうか。
――御社自体も、営業代行を行う数多くの営業パーソンをリモート下でマネジメントしていく必要があると思いますが、コミュニケーションの面で難しいところはありますか。
もちろんありますし、現在進行形で悩んでいます。営業代行を担当する営業が当社には500名ほどいますが、これまでの「あたりまえ」を前提としたコミュニケーションは危険だと思い、注意しています。対面であれば、アドバイスをするために「どうしてこれをやったの?」と行動の意図をまず気軽に聞くことができていました。それはお互いの仕事をやりやすくすためのコミュニケーションだったはずです。しかし、テレワークでこれがテキストになった瞬間、どうも詰められているように見える。相手を否定しないクッションをおいたコミュニケーションをとっているはずなのに、相手を困らせているかもしれない。そういう難しさはあります。
――今井さんが発表された「シン・セールス理論」ですが、不安定な状況のなかで、営業担当者が立ち返る場所をつくってあげることもひとつの目的なのかなと思っていました。
おっしゃるとおりです。以前、営業の皆さんに「営業が一番苦しくなるときは?」というアンケートをとったところ、「成果が上がらないとき」という回答が約60%でダントツでした。営業は、成果が上がっていれば、お客様に価値を提供できているということですし、上司や周囲にも認められますから自然と自分の介在価値を感じられるんですね。
「シン・セールス理論」をつくろうと思ったのは、いままさに世の中の営業活動がさらに複雑に難しくなっているからです。営業と顧客のミスマッチをなくし、お客様に断れられて傷つくことなく、楽しい営業ができるようになるために、立ち返る教科書をつくりたかったんですね。ここに書いてあるノウハウは、コロナ禍以降に急激にできたものではありません。これまでのノウハウを、いまの時代に活用できるようにひとつにまとめたものです。
「シン・セールス理論」はひと言で表すならば「コンテンツが主役の営業スタイル」です。コロナ禍でどうしても企業の消費や投資が鈍り、情報過多になり比較検討疲れが起きています。今後はより、「信じられる人からものを買う」という「会話経済」の流れがやってくるでしょう。では情報過多の時代に、どうやって「信じられる営業」になるか。そのきっかけがコンテンツになると思っています。オンライン商談のスキルを上げる必要ももちろんあると思いますが、対面より表情を読みづらく会話が進みづらいというのは事実だと思います。
どんな状況でも売上を上げられるトップセールスではなく、オンライン商談でどうも売れなくなっている営業の人たちの営業活動をもっとかんたんにするために、「コンテンツ」を使ってほしいと考えています。発表後、SNSの反響で嬉しかったのは「自社だとこのような取り組みをしています」というシェアをしてもらえたこと。あとは私自身が営業をするときに、「シン・セールス理論」を活用していることに気がついてもらって、新規のお客様に喜んでもらえたこともありました(笑)。