改革のキーマンは?フェーズによって異なるポイント
前編はこちらから!後編からでも楽しんでいただけます。
宮田 営業組織改革のキーマンとなるのは、どういう方でしょうか。
杉本 当社の場合は、インサイドセールスを行う平均年齢49歳のベテラン営業です。彼らが力を出し合うことでしっかりと成果を残すことができています。ベテラン営業の何より良いところは、安定感のある営業トークです。私もそばでずっと聞いているのですが、安心感があります。ソフトバンクの場合は音声・モバイル・クラウド・データなど、さまざまなジャンルの数百から数千の商材がありますが、ベテランであれば誰かが必ずサービス知識を持っていて対応できます。また、1人ひとりの知識も豊富なのでひとつの商材を提案していると思えば、自ら「お客様の興味がありそうだったので」ということでクロスセルをかけ、売上を最大化することが自然とできているといつも感心しています。
加藤 当社のプロフェッショナリズムをまとめている「Values」のなかに「強みを活かし、成果を出す」というものがあります。そこには同じようなタイプの営業だけでは組織に化学反応が起きないので、それぞれが違って良いという大前提があります。営業それぞれの個性を磨いておくことで、戦略が変わったときに4番バッターが入れ替わるみたいなイメージですね。
まず件数の多いスモールマーケット市場では、KPI管理をきちんと行い、PDCAを回せることが重要です。ITリテラシーも含め、データ起点で仮説を立てて振り返ることができる人が、組織を作るうえでのキーマンとなるでしょう。
一方、エンタープライズを担当するアカウント営業部発足のタイミングではどうか。我々は法人向けの名刺管理を展開していますが、当時は全社で名刺管理をしたことがある大手企業なんて世の中にいませんでした。新しいことを啓蒙していくプロセスなので、めちゃめちゃ個性の強い、タイプもまったく違う3人を集めて「それぞれがそれぞれのやり方でやれることをやってくれ」とだけ共有していました。マネジメントを放棄しているように見えるかもしれませんが、このタイミングではとにかく3人がいちばんやりやすいかたちを大切にしました。実績が出てから、仕組み化できるところを組み立てていく感じですね。
宮田 人となりや性質を知り、適材適所に配置するために行っていることはありますか?
加藤 会社全体だと「強マッチ」と言うのですが、自分の「強み」を定義してメンバーにシェアすることをやってもらっています。また、普段の1on1ではそれぞれの課題を「欠点」ではなく「伸びしろ」と表現します。要は「どこが良いところで、それをどう伸ばすか」に注目して、コミュニケーションをとるようにしています。
久我 私自身、新卒のころから当社の事業に携わっているのですが、会社に残って力を発揮してくれるメンバーはジャック・ウェルチの提唱したとおり「企業文化への共感度」が高いことが必須です。企業側と働く個人との間で、価値観が一致しないときは互いに不幸だと思っているので、ここは大前提で大切にしています。
キーマンはSansanさんが言っていたとおりで、立ち上げ時のメンバーは本当に個性が強烈なメンバーが多かったです。まだまだ未成熟なプロトタイプとも言えるプロダクトを、ビジョンや熱意で成約まで導きます。それくらい、何にもないところに旗を立てるような人材が必要です。成長期になってくると、立てた旗をスケールさせていくことが大切になってきました。成功の再現性を組織に実装し、勝率を高めていくチームをどうつくるかが重要になってきます。組織全体の動きを把握しながら資源のアロケーションを行い、PDCAに基づきチームを発展させていくことができるマネジメント要素が強いタイプの人が活躍し始めます。
また、停滞した事業を引っ張り上げるときには、ビジョナリーな人材が必要でした。人が辞め、営業本部が壊滅的な状況になったとき、ほかの部署に異動していたり、子会社に出向していた創業期から当社を支えてくれていた人材を営業本部へと戻し、我々が本来向き合うべきビジョンをあらためて強く共有することで引っ張り上げていきました。そして今後目指すべき組織はデジタルテクノロジーやデータを使いこなすことは前提であり、カスタマーセントリックな考え方に基づき行動できる人材が必要と考えています。