初回訪問で、やってはいけないこと
初回訪問に必要な準備もパターン化できて、短時間に初回訪問シナリオもできた。聞く項目もアタマに入れた。3つの距離と3つの感覚もばっちり理解できた。これで準備は万全だ。あとは初回訪問の1時間で自社の製品・サービスの説明をしっかり行い、顧客の期待に応え、2回目訪問以降の提案フェーズに進められれば、初回訪問は合格だ。しかしこれは初回訪問の結果だ。良い結果を出すためには良い準備に加え、良いやり方が必要になってくる。ではどのようなやり方で1時間の初回訪問を進めていけばいいのだろうか?
毎回、最後に登場する「本日のやってはいけない〇〇営業」でも伝えているが、営業は「やっていけないこと」のほうが早く身につくと言われている。「やれ!」と言われたことよりも、「やってはいけない!」のほうが印象に残りやすく、実践しやすいのだろう。それでは「やるべきこと」の前に、初回訪問中に「やってはいけないこと」を「営業マナー編」と「説明テクニック編」のふたつに分け、やり方を伝えていきたいと思う。
やってはいけない4つの「営業マナー」
1)受付前には集合しない!
2名で訪問する場合(例:上司と部下)は、商談に入る前に初回訪問のシナリオ確認や事前情報を共有するべきだ。お互いの役割や進め方の事前確認をしないと言っていることがバラバラになり、顧客からのイメージが悪くなるからだ。そのために集合場所は顧客の受付前ではなく、訪問するビルの1階にしたほうがいい。顧客の受付前のフロアにいると、受付の人に聞こえてしまうかもしれないし、廊下を歩いていた顧客に会って「〇〇さんですか?」と先に会議室と通されてしまい、シナリオ確認の会話ができないことがある。ビルの1階で10分前に待ち合わせ、会話をしてから訪問に臨もう。
2)初回訪問前に、ほかの相談をしない!
10分前に待ち合わせした1階では、初回訪問以外の相談や無駄話をしないようにしよう。よく部下が上司に「午前中に行ってきた商談の件を話していいですか」と相談するケースがある。上司もすぐに相談にのってあげたいので聞いてあげていると、バタバタと準備不足で初回訪問に入ってしまう。これではシナリオ確認どころではない。「今はこれからの商談に集中しよう。終わってから聞くよ」と伝え、まずは初回訪問のシナリオ確認をするべきだ。
松下幸之助氏はパナソニック創業のころ、電球を売り歩く営業をしていたが、うまくいかないことが多かったという。「なぜさっきの商談はうまくいかなかったのだろう」と悩みながら次の商談に入ると、次もうまくいかないことがほとんどだったそうだ。うまくいかなかった直前の商談や昨日の商談のことはいったん忘れ、目の前の商談に集中するようになるとうまくいくようになったとか。準備から商談直前までは松下幸之助氏の「その商談に集中しなはれ」の精神で臨もう。
3)パソコンを最初から開いて待たない!
まったくの初対面の初回訪問なのに、商談ルームに通されたらいきなりパソコンを広げて座っている営業がいる。中には3人来て3人ともパソコンを広げている営業もいるし、許可もなく電源まで借りている無礼者もいる。このような営業を私は「いきなりパソコン営業」と呼んでいる。すぐに話ができるように準備をしているとも言えるが、営業も緊張していてパソコンを開いていないと不安なのだと私は思う。パソコンから資料を投影して説明し、議事録をとる場合でも、まずはパソコンを閉じておき、最初の5分はアイスブレイクの会話をしてからパソコンを開くことにしよう。顧客も安心して、説明を聞けるはずだ。
4)デスクトップが汚い営業は外に出すな!
説明するパソコンのデスクトップが汚い営業はダメだ。汚いとはデスクトップにやたらファイルを貼り付けていることを指す。こういう営業は必ず、「〇〇製作所提案書」「〇〇商事見積もり」という社名つきファイルをデスクトップに多数保存している。以前、部下に注意すると「拡張モードでプロジェクタをつなげるの映りません」という者もいたが、すぐにやめさせた。拡張モードのつもりが複製モードになっていて、デスクトップが映ってしまうことはある。直接ノートパソコンの画面を見せてデモをするときもあるだろう。また、メールのポップアップ通知をオンにして、件名に顧客名が出てしまっている営業もいる。
このような営業に対し顧客は「この営業と取引をしたら、うちの会社名もこのようにデスクトップに表示されるのか……」と不安に思う。つまり初回訪問の期待に応えるどころか、信頼が急降下するのだ。内勤の人はいいが、顧客と接する機会の多い営業はデスクトップをきれいにして、ポップアップはオフにして商談に臨もう。とにかくデスクトップが汚い営業は、外に出してはダメだ(笑)。