※本コラムでは、取引のない新規顧客を‘顧客’と記載する。‘皆さん’とは明日から変わることのできる読み手の皆さんのことだ。
決まらない商談をチームでルール化しよう
第5回では初回訪問でやるべき「説明テクニック」について、「顧客に想像(イメージ)してもらい、説明と会話に分けて商談を進め、価値を感じてもらった顧客に最後に聞く」という流れを説明した。最終回の第6回では、1時間の初回訪問の終盤、つまり2回目以降の訪問につなげるためのテクニックについて説明したい。タイトルの「御礼メールは送るな!」が気になる皆さんも多いと思うが……(笑)、順に読んでいってほしい。
初回訪問でやるべきこと 「説明テクニック編その1」の続き
8)「正しい」次のアクションを決める
初回訪問の終盤には「正しい」次のアクションを決めて帰ることを意識してほしい。次のアクションとはお互いの想いが一致する次の訪問理由が決まることを指す。自社製品・サービスが良いと評価を受けたあとは「次はお互い、どうしますかね」となるだろう。「次は関係者を集めるのでもう1回説明をして欲しい」とか「経理部メンバーの細かい作業をしているメンバーを入れるのでヒアリングして見積もりや提案に進んでほしい」など具体的に2回目のアクションが決まる場合はこれでいい。問題は「また追って連絡します」と言われる場合だ。顧客は営業のペースでどんどん売り込まれることを嫌がるので、このように「またいつか……」となりがちだ。そのときに「またご連絡お待ちしています」と普通に切り返してはいけない。
具体的に「次は〇〇の細かな打ち合わせ」にならなかった場合でも、説明後の会話の中や聞く項目から「正しい」次のアクションをひとつは見つけてほしい。たとえば導き出した人や組織の情報から、「次は○○の部署に紹介をさせてください」というアクションをお願いすることもある。初回訪問では、できる限りすべての質問に回答をするべきだが、「回答できなかったご質問を調べてご連絡を差し上げます」という宿題型の柔らかい次のアクションにしておいて、次の接点を約束しておくことも悪くはない。「正しい」次のアクションとは顧客と営業の想いが一致していること、「次はこれね」とお互いが合意できていること。皆さんの製品・サービスにより、黄金の次のアクションが3つぐらい用意されていれば、若手の営業もやりやすいだろう。顧客がよく使う「また追って連絡します」の対策には、次のアクションを組織で考えて、バリエーションを増やしてみよう。
9)決まらない商談をチームでルール化する
顧客には失礼な話だが、初回訪問で筋の悪い商談、決まらない商談だと感じるときがある。当て馬に呼ばれているとき、永遠に決められそうにない壮大な検討範囲を担当者が語るときなどがそうだ。ベテラン営業はそう感じると「この商談に今後付き合っていくと手がかかりそうだ」と思い、サッと引く感覚を持っている。この感覚を標準化することはできない。だが導入検討のための要件ポイントがおかしいときや、間違っている質問や主張が多い商談は「決まらない商談」とチームで注意することはできるはずだ。
たとえば経理部門にソフトウェアを提案するとして、経費精算の計算やチェック業務が多いため残業削減が検討ポイントだったとする。ところが「ログイン時はシングルサインオンに対応(ひとつのパスワードで統一できること)していることが絶対条件だ」とか「入力画面のデザインが最優先事項だ」という意見が出ることがある。これは課題解決をするための本質からはかけ離れている。欲しい機能かもしれないが、導入検討の本質からかけ離れていることにこだわっている商談はよくある。
私もチーム内で「この5つの検討テーマばかりを質問してくる商談は決まらない例」をルール化しており、その場合は深追いしないことをフォーメーション化している。顧客側には失礼なルールだが、すべての商談に100%に力を注ぐことは現実的に厳しいし、営業効率も悪い。決まらない商談のテーマやキーワードを標準化してみてほしい。
10)ダメなら情報収集に切り替える
そしてこれまた顧客に失礼な話だが「筋の悪い商談は情報収集に切り替える」ことを営業とルール化してみてはどうだろう。決まらない商談ルールに触れた場合は、「オレの1時間を返してほしい精神」で、その業界や業務のコトを聞くだけ聞いて帰るのだ(顧客の企業情報ではない)。顧客はその業種のプロなので、市場の成長性や競合先のポジションなど鋭い情報を持っている。皆さんの製品・サービスに役立つ業種や業務についても企業によってさまざまなパターンがあるので勉強になる。ダメなら情報収集に徹するというフォーメーションをチームで決めて情報を集め、営業ミーティングで共有して、業種・業態向けのスキルを底上げするのもよいだろう。