ラーニングエージェンシーおよびラーニングイノベーション総合研究所は、2023年6月19日~8月31日の期間で484名の管理職を対象に「管理職意識調査」を実施。前回公表した「部下へのフィードバックの実態」に関する分析結果に続き、今回は「部下へのフィードバック手法」に焦点を当て、分析結果を公表した。
フィードバック後の部下の行動に対して、約4割の管理職が「行動につながらない」と悩んでいる
管理職の「成長してほしい」という願いどおりに部下が成長しているのかを調べるため、フィードバック後の部下の行動についてどのような悩みがあるか、管理職に質問した。
結果、43.6%の管理職が部下に対して「自分の課題を認識してはいるが、すぐに行動につながらない」ことに悩みを抱えていることがわかった。
部下の成長を感じている管理職ほど、「即時フィードバック」を実践している
次に、フィードバックの違いにより管理職の感じる「部下の成長度合い」に差があるのかを明らかにするため、フィードバックの頻度・場所・手法・内容と、管理職が感じる「部下の成長度合い」の関係を調査した。
まずは「フィードバックの頻度」と「部下の成長度合い」の関係について見ていく。結果、部下が「非常に成長している」と回答した管理職は、44.4%が「即時にフィードバックをしている」ことがわかった。その割合は、「成長してない」と感じるにつれて低くなり、部下が「成長していない」と感じている管理職は14.3%で、「非常に成長している」と感じている管理職より30.1ポイント低い結果となった。
また、部下の成長度合いについて「成長していない」「わからない」と回答した管理職は、フィードバックの頻度を「特に決めていない」と回答する割合がそれぞれ28.6%、34.5%の結果となり、「非常に成長している」「成長している」と回答した割合に比べて高くなった。
部下の成長を感じられない管理職ほど「ネガティブフィードバックの場所」を気にする傾向あり
次に、フィードバックの場所について見ていく。フィードバックする場所を気にかけているか質問したところ、「常に最適な場所を選ぶようにしている」と回答した割合が全体的に高くなった。
特徴的だった項目は、部下が成長していないと感じる管理職ほど「ネガティブフィードバックの環境」を気にする傾向にある点である。部下が「成長していない」と感じている管理職は、「非常に成長している」と感じている管理職より、「ネガティブフィードバックの際に場所を選ぶようにしている」割合が15.1ポイント高くなった。
8割以上の管理職が「対面・口頭」でのフィードバックを実施。部下の成長を感じている管理職は、「対面・口頭」に加え、6割が「チャットやメール」も活用
次に、フィードバックの伝達方法について見ていく。結果、「対面で、口頭伝達している」と回答した管理職が8割以上の結果となり、大部分の管理職が「対面&口頭」を意識していることがわかった。
また、部下が「非常に成長している」と感じている管理職は、94.4%が「対面で、口頭伝達している」結果となり、部下への成長を感じることができている管理職ほどこの割合は高くなった。また、「非常に成長している」と感じている管理職の61.1%が「チャットやメールなどで文書伝達している」と回答。その割合は「成長していない」と感じている管理職よりも46.8ポイント高くなった。「非常に成長している」と感じている管理職は、図2でも「即時フィードバック」する割合が高く、チャットやメールを使用してでも即時にフィードバックすることを意識している傾向がわかる。
フィードバック時、部下から「意見を傾聴すること」「納得感を醸成すること」を意識している管理職ほど、部下の成長を実感
次に、フィードバックで気をつけていることを見ていく。部下が「非常に成長している」と感じている管理職の6割以上が、「部下の意見を傾聴すること」「部下の納得感を醸成すること」を意識していることがわかった。一方、「成長していない」と感じる管理職は「部下の意見を傾聴すること」は14.3%と低く、「部下の納得感を醸成する」には回答が集まらなかった。
部下の成長を感じている管理職ほどポジティブフィードバックが多く、「フィードバックの意図」や「求める人材像」、「日頃の感謝」も伝えている結果に
最後に、フィードバックの内容について、見ていく。まずは、フィードバック時のポジティブとネガティブの割合を質問した。結果、部下が「非常に成長している」と感じている管理職は、55.6%が「ポジティブが多く、ネガティブが少ない」と回答した。この割合は、部下の成長を実感しているほど高く、「成長していない」と感じている管理職はわずか28.6%となった。
一方、「ポジティブが少なく、ネガティブが多い」と回答した割合は逆の結果となり、部下の成長を実感していない管理職ほど高い割合となり、「非常に成長している」と「成長していない」の差は23ポイントも広がる結果となった。さらに、部下の成長について「わからない」と回答した管理職は、フィードバックのポジティブ・ネガティブの割合も「特に決めていない」と回答する割合が44.8%ともっとも高くなった。
さらに、フィードバックで“心がけて伝えていること”を質問した。結果、「事実や結果に基づく具体的な内容」を伝達する割合が、部下の成長実感に関わらず高いことがわかった。
特徴的だった結果は、部下が「成長している」と感じている管理職は「事実や結果に基づく具体的な内容(72.2%)」の次に、「フィードバックの意図や理由(66.7%)」「目的・目標や求める人材像(55.6%)」、さらに「日頃の感謝や努力への労い(50.0%)」を伝える割合が高いという結果となった。
調査概要
【ラーニングイノベーション総合研究所「管理職意識調査(部下へのフィードバック手法編)」】
- 調査対象者:同社が提供する管理職向け研修の受講者
- 調査時期:2023年6月19日~8月31日
- 調査方法:Web・マークシート記入式でのアンケート調査
- サンプル数:484人
- 属性
(1)業種
情報通信業 106人(21.9%)
製造業 96人(19.8%)
卸売業,小売業 56人(11.6%)
サービス業(他に分類されないもの) 56人(11.6%)
建設業 29人(6.0%)
不動産業,物品賃貸業 20人(4.1%)
学術研究,専門,技術サービス業 20人(4.1%)
運輸業,郵便業 15人(3.1%)
電気,ガス,熱供給,水道業 13人(2.7%)
金融業,保険業 13人(2.7%)
生活関連サービス業,娯楽業 7人(1.4%)
宿泊業,飲食サービス業 6人(1.2%)
複合サービス事業 6人(1.2%)
教育,学習支援業 3人(0.6%)
医療,福祉 2人(0.4%)
その他 36人(7.4%)
(2)企業規模
1~50人 56人(11.6%)
51~100人 101人(20.9%)
101~300人 198人(40.9%)
301~1,000人 97人(20.0%)
1,001~5,000人 27人(5.6%)
5,001人~ 4人(0.8%)
分からない 1人(0.2%)
※各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としている
※構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がある