生成AIと営業の「共創」を成功させる5つの論点
生成AI導入の3つの壁は、DX推進の課題とも共通している。小髙氏は「同じ失敗を繰り返さないことが重要」だとしたうえで、AIを「共創のパートナー」として、営業改革を成功させる5つの論点を整理した。
1.人と生成AIとの協働による付加価値の提供
2.営業オペレーションモデルの再考
3.学習データマネジメントの整備
4.ガバナンスの整理
5.テクノロジー・システムの導入
本来はステップ1から順に検討を進めなくてはならないが、実際はステップ5から着手してしまうパターンが非常に多い。生成AIを導入する前に、「人」の強み(判断、感情の理解、意味付け)と生成AIの強み(処理の最適化、拡張、繰り返し作業の高速化)を掛け合わせた業務・体験をしっかりと描き切ることが重要だ。
収益成長を実現した企業は何をしているのか
人と生成AIの役割分担を考えるうえで、まずは何から着手するのが望ましいのだろうか。小栗氏より、実際の営業現場におけるユースケースが紹介された。
一般社団法人AICX協会 代表理事 小栗 伸氏
NTTドコモにて12のAIプロジェクトを製品化・事業化。世界で最も権威あるIFデザインアワードGoldをはじめ、グッドデザイン賞など、国内外のアワード20件受賞。2021年、(株)ビジョナリーエンジンを創業、新規事業創出支援、生成AIプロダクト開発支援に携わる。2025年AIエージェントの社会実装を推進するAICX協会設立。(一社)生成AI活用普及協会 協議員。経済産業省主催「始動Next Innovator 2021」採択。
ひとつが、大手サービス業の営業組織における事例だ。同社はすでに「商談記録の自動化」から「提案・アクションの自動化」へと生成AI活用のステップを進めており、将来的にはさまざまなシステムを連携させ、「業務のAIエージェント化」を目指している。
こうしたロードマップの推進を支援する中で、小栗氏がつねに感じる課題が「分断」だという。システムや組織が分断している環境から「生成AIを使って売上を成長させるには?」という議論は生まれない。しかし実際は、こうした分断を解決しないまま生成AIを導入し、成果が出ずに苦戦している企業が多い。
そこで小栗氏は、スタートアップ企業における事例を紹介した。その企業では、戦略立案に要する時間を2週間から2日程度へ短縮した体験から、社員全員が「生成AIは時間の概念を壊す」という共通認識を持った。その結果、「すべてのタスクは2時間で完了する」ことを前提にオペレーションを設計するなど、事業全体が加速しているという。
ほかにも、「『知る』は2割、『使う・共有』は8割」を合言葉としてノウハウを積極的に共有する文化をつくり、生成AI活用を組織全体に浸透させている事例、「生成AIは専門性の壁を壊す」ことを前提に、職種の垣根を越えたキャリアチェンジを積極的に支援する事例を挙げた。
「これらのスタートアップ企業は、収益性が格段に向上しています。たしかに日本企業全体では、グローバルと比べて売上成長につながる生成AI活用が進んでいません。しかし、成功している企業も確実に存在するのです。まずは、成功している企業が何をしているのか徹底的に知ることが、人と生成AIの協働関係を描く最初の一歩ではないでしょうか」(小栗氏)
