「驚き」を体験して既存の枠組みを乗り越える
セッション後半では、小髙氏と小栗氏の対談が実施された。最初のテーマは「生成AIで売上が伸びた企業と効率化に留まる企業の違い、やってはいけない失敗のパターン」とは何か。小栗氏は3つの壁を挙げた。
ひとつは「『驚き』がなければ、売上成長につながる設計はできない」ことだ。生成AIの進化は「産業革命レベルの技術革新」だが、蒸気機関車のようにひとめで衝撃を与える発明とは異なり、生成AIは自分で使い倒さないとその本質を理解できないという。
この「驚き」を体感した人が少なく、さらに既存事業が強い企業の場合、ふたつめの「前提の差」に直面する。既存の枠組みを前提に生成AIを活用しても、既存業務の最適化・効率化に留まってしまう。ユースケースでも紹介したように、収益成長を実現した企業は「時間の概念」「専門性の壁」といったこれまでの前提を覆したうえで、生成AIを活用しているのだ。
3つめの壁が、経営層から現場へ、現場からベンダーへの「丸投げ(外注)の構造」だ。生成AIの本質を理解しないまま丸投げしても、期待する効果は得られない。小髙氏も同意し、ベンダーマネジメントにリソースを割き、肝心のシステムの中身を把握できていないケースも少なくないと述べた。

「生成AIの使い分け」がトップ営業をさらに強くする
ふたつめのテーマは「勘と経験は不要になるのか/トップ営業のAIの向き合い方とは」だ。
小栗氏は、AIは「量・速度・網羅性」において圧倒的に人を凌駕するが、基本的に入力された情報(すでにある情報)しか扱えないと指摘した。対して、人は「文脈・感情・洞察」に長けており、「『ない情報』をとりにいく」ことができる。
そのため、トップ営業の勘や経験は今後も強みであり続けると小栗氏。そのうえで、生成AIを使い分ける営業が今後さらに価値を発揮するという。
使い分けのひとつは、自分の勘・経験を基に生成AIのアウトプットの質を高める「掛け算」モード、そしてもうひとつが、生成AIを介して自分の勝ちパターンとは異なる視点を見出す「足し算」モードだ。とくに足し算は、経験豊富な営業ほど「こうすべきだ」というバイアスがかかりやすく、意外と難しいという。
「掛け算と足し算を状況に応じて使い分け、生成AIを『使う』のではなく、生成AIで『変わることができる』営業が、今後さらに活躍していくでしょう」(小栗氏)
最後に小髙氏は、営業モデルを再定義するステップを大きく3つにまとめた。
最初のステップでは、生成AIを活用してどこで競争優位性をつくり、どのタイミングで顧客体験を変えるか「営業の勝ち筋」を描く。次に、最適なユースケースを選択して「小さく始める」ことで、トライアンドエラーを繰り返しながら成功体験を積み重ねていく。そして最後に、データ整備や人材育成・マネジメント、オペレーションの再定義、ガバナンス整備といった「構造改革」を行い、生成AIの成果を個人から組織へスケールさせていく。
この順序で進めていくことで、生成AIを「効率化のためのツール導入」で終えることなく、「営業モデルの再定義」を実現できると小髙氏。「生成AI活用において、似たような課題に直面している企業は多いはずです。ぜひ一緒に議論し、紐解いて、より良いモデルをつくってきましょう」(小髙氏)と会場に呼びかけ、セッションを締めくくった。
