バーチャレクスグループのバーチャレクス・コンサルティング(以下、バーチャレクス)は「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施。2025年版第6弾の結果を公開した。

カスタマーサクセス取り組み項目の情報管理体制


カスタマーサクセスに取り組んでいる人に、カスタマーサクセスに関する各取り組み項目の情報管理体制について、「全社で一元管理」か「部門、チームごとに管理」しているかを質問し、それぞれ効果体感別で比較した。その結果、カスタマーサクセスの効果を実感している効果実感層(n=494)と、効果を感じていない・どちらとも言えない効果未実感層(n=345)の間で差が見られた。
まず、「全社で一元管理の上取り組んでいること」について、効果実感層における「顧客との接触状況/折衝履歴管理」は47.6%、未実感層では27.5%と約20ポイントの差だった。また、「顧客が達成したい期待内容の把握」や「顧客満足度管理」など、顧客理解や顧客成果につながる項目でも、効果実感層の方が高い取り組み率を示した。また、顧客の離脱(取引停止)防止策の全社一元運用も、効果実感層と未実感層で10ポイント以上の開きが、さらに顧客満足度の数値化や顧客データのアップセル・クロスセルへの活用など、データドリブンな取り組みも効果実感層が優位である。これらの結果から、全社的な顧客情報の一元管理と、顧客の期待・満足度・リスクの可視化が、カスタマーサクセス施策の成功を左右する要因となっていることが推察される。
一方で効果未実感層では上位項目として「顧客との接触状況」や「顧客リスト作成」など基本的な項目が挙げられるものの、全体的に全社一元管理の実施率は20%前後となり、効果実感層とのギャップが確認された。

次に、「部門/チームレベルで取り組んでいること」について質問したところ、効果実感層の上位項目としては「顧客との接触状況管理」が47.2%、「顧客との取引状況管理」が39.7%、および「顧客の要望に応えるための製品・サース改善」が38.7%という回答だった。これらは全社一元管理と同様に「顧客情報の可視化」「顧客満足度向上」へ直接寄与する項目であり、部門単位でも積極的に管理されていることがわかる。
さらに、「顧客との関係性の数値化・見える化・データ化」38.1%にも注力しており、データ駆動型アプローチを積極的に採用していることが特徴として示されている。これらのデータから、効果実感層の上位項目でいずれも30~40%台の比率を示しており、部門・チーム単位で取り組む企業は、顧客接触状況や取引状況管理、製品・サービス改善といった重要項目に着手している結果、カスタマーサクセスの効果を一定程度実感していると言える。

一方、効果未実感層では、同一項目における実施率が効果実感層に比べておおむね5~15ポイント低い状況となった。
これらのデータから、効果実感層も未実感層も、全社一元管理より部門/チーム管理が多く採用されていることが確認された。
一方、部門レベルでの取り組みは、より現場に即した柔軟な対応や専門性が活かされやすく、結果として実施率や効果の実感度が高まるケースがあると考えられる。効果実感層の部門管理では「顧客問い合わせ対応」(38.5%)や「製品改善」(38.7%)の実施率が高く、現場の柔軟な対応が反映されていると言える。
ソフトウェア・外部リソース活用実態
続いて、先ほどと同様にカスタマーサクセスに関する各取り組み項目において、ソフトウェアや外部専門家の活用状況を見た。
まず「ソフトウェア/テクノロジーを使って取り組んでいること」があるかを質問してみたところ、効果実感層においては、顧客管理の高度な取り組みが顕著であり、これらのデータは、効果実感層の企業が、ソフトウェアやテクノロジーを駆使して、顧客の行動や満足度を数値化し、プロアクティブなフォローアップを実施していることを示唆している。
一方、効果未実感層では基本的な顧客管理活動が上位を占めているが、全体的に効果実感層と比べて実施率が低い結果だった。高度な分析や戦略的な取り組みの実施率は低く、顧客データの統合管理やプロアクティブな顧客対応の仕組みが十分に整備されていないことがうかがえる。


全体的に、効果を感じている層の方がほとんどの項目で高い実施率を示しており、とくに「取引状況に応じた顧客セグメント化」や「顧客の離脱防止施策の構築および実践」などの戦略的な取り組みで差が見られる。これらの結果から、カスタマーサクセスの効果を高めるには、基本的な顧客管理だけでなく、データを活用した顧客セグメンテーションや満足度の数値化、さらには離脱防止策の構築などの取り組みが重要であることがわかる。

続いて外部専門家等に相談・委託している項目について質問したところ、効果実感層では「顧客からの意見収集」が12.1%、「自社が提供したサービスによる顧客利益の確認」や「顧客が達成したい具体的な期待内容の把握」がそれぞれ約10%と、相対的に高い割合で実施されている。これにより、企業は外部の専門知識や支援を通じて、顧客のフィードバックを効果的に活用し、カスタマーサクセスの施策を強化していると考えられる。

効果未実感層でも「顧客からの意見収集」がもっとも高い割合となっており、客観的な顧客フィードバックの重要性と、その収集における外部専門家の価値が示されていると言える。
「利用しているヘルススコア」と「成果指標として定めているKPI」

まずヘルススコアの活用において、効果実感層では、顧客の行動データを重視したヘルススコアの採用が多く見られた。とくに「ログイン数やログイン率」が51.8%、「ユーザー数」が48.8%といった指標がもっとも多く利用されており、顧客の製品利用頻度や範囲の広がりを重視していることがわかった。また、「メール配信数」の31.6%や「登録データ数」の30.8%など、顧客のエンゲージメント深度を示す指標も積極的に活用されている。これらのデータは、顧客の継続的な利用状況をリアルタイムで把握し、早期に解約リスクを検知するのに有効である。また、「ユーザーレビュー」の22.3%や「コミュニティ参加」の20.4%など、顧客の能動的関与を示す定性的指標も活用され、行動データを補完することで顧客の状況をより深く理解するのに役立っている。
一方、効果未実感層は、ヘルススコアの活用自体が不十分である傾向が見られた。「分からない/特に利用していない」という回答が27.2%ともっとも多く、ヘルススコアを体系的に設計できていない可能性が高いと考えられる。

次に、成果指標として定めているKPIについて見た。効果実感層では顧客との長期的関係構築に直結する指標が上位を占めた。「アップセル率/数/額」が29.8%で高く、既存顧客の収益拡大にフォーカスしていることがうかがえる。なお、「特に定めていない/KPIをまだ定めていない」は5.3%と低く、明確な指標設定が行われていた。
一方、未実感層では「特に定めていない/KPIをまだ定めていない」が31.6%ともっとも多く、明確な指標を持たない企業が約3割超存在することが明らかとなった「顧客接触数」の22%や「継続率/数/額」の21.2%が続くものの、効果実感層と比べてアップセル率・数・額など収益指標の活用が低い状況だった。
顧客維持や解約防止系の指標(解約率・数・額、契約更新率・顧客維持率)も2割前後となり、収益や顧客維持に直結する指標の設定が不十分なまま施策を進めている企業が多いことがうかがえる。このような指標設定の有無や明確度が、カスタマーサクセス施策の方向性やモチベーションを左右し、結果的に効果の差につながっていると考えられる。
カスタマーサクセスツール利用状況

最後に、カスタマーサクセス業務でどのようなツールを利用しているかを見た。効果実感層では、顧客情報管理、オンボーディング管理ツール、ヘルススコア管理などを積極的に導入しており、ツールや仕組みの活用が効果の有無に直結している可能性が高いと考えられる。とくに「顧客情報管理」の利用率は効果実感層で約半数にのぼり、未実感層の26.4%を上回った。
また、「オンボーディング管理ツール」「ヘルススコア管理」「NPS計測」なども、効果実感層での導入率が未実感層に比べてほぼ倍の差が見られた。さらに、各種サポートツール(「チャット」10.5%、「問い合わせ統合」10.1%など)を複合的に利用する傾向が認められるが、未実感層ではいずれも数%台となった。
加えて、「AIによる顧客対応支援」(実感層:10.3%、未実感層:4.3%)や「AIによるデータ分析・予測」(実感層:9.1% 、未実感層:2.6%)といったツールの利用率でも、効果実感層が2~4倍程度高い結果となっている。AIを使った顧客行動予測や自動応答などを活用している企業は、顧客対応の効率化や解約防止策の強化につながると推測される。
一方未実感層では「特に利用していない」が43.2%と突出しており、何らかのツールや仕組みを導入せず、属人的かつ断続的な運用になっているケースが多いと考えられる。
【調査概要】
「2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」
調査方法:インターネットアンケート
調査実施期間:2025年2月21日~2月26日
対象地域:全国
対象者:20歳から65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生をのぞく)64,138人