経営層・マネジメント層から「やりぬく意思」を示す
本連載の第1回、第2回ではセールス・イネーブルメントの基盤であるSFAの構築・活用術について解説しました。これらのテクノロジーを活かして成果を出すには、高い実行力が欠かせません。とくに、経営層が売上目標の未達に対して「仕方ないか」という姿勢を見せる、決めたことをやらなくても何も言わないといったことが常態化すると、営業組織は弱体化していきます。困難に直面しても目標達成を諦めない意志が示されることで、営業メンバーも同様の姿勢を取るようになります。
こうしたカルチャーを現場のボトムアップだけで醸成することは非常に難しいと言えるでしょう。なぜなら、現場の営業メンバーは日々の業務に追われているうえに、それぞれ考え方が違うため、方針がまとまらないことも多いからです。相反するカルチャーが複数存在していると、組織の力は弱まってしまいます。経営層やマネジメント層がカルチャーの方向性を明確に示し、それにコミットするように促すほうが、圧倒的にカルチャーの浸透は速いでしょう。
ある人材系の上場企業では、代表自ら毎週の営業会議に参加し、最新のパイプラインとKPIの進捗を基に具体的な改善アクションを確認していました。代表は「数字とデータに基づかない議論は無駄である」という意思を持ち、さらに現場の営業メンバーにも、データに基づくディスカッションを求めていました。このように、まずは経営層がデータと数字に対してコミットメントを示すことで、営業組織全体でデータと数字に基づいて行動するカルチャーが醸成されていくのです。
営業が強い企業は、経営層の「グリット(やりぬく力)」が組織の根幹に深く浸透しています。次のページでは、実行力が高いカルチャーを醸成するための仕組みについて解説します。