「顧客ターゲット」と「商材」の変化がなぜ必要なのか
第1回でフォーカスした「商材の変化」は、基本的には販売商材の多角化により顧客との取引金額を向上させようとする打ち手です(単価の向上)。それに対して、顧客ターゲットの変化というのは、今まで販売してこなかったターゲットに対するアプローチで、案件や受注の総量を増やすための打ち手となります(件数の向上)。当然、新たな商材を展開する場合でも、そもそもターゲットにしてこなかった新たなターゲットにするケースもあるため、件数の向上を見越した打ち手であるケースもあります。
いずれにせよこれらの戦略策定により、「顧客ターゲット(誰に)」と併せて、「商材(何を)」提供するのかを検討する流れが一般的です。これらの変数のどちらかを変化させて目的実現に向かうケースもあれば、両方の変数を戦略として変化させて営業組織を動かすケースもあります。
セールスイネーブルメントでは、「顧客ターゲット(誰に)」「商材(何を)」の戦略変化に併せて、「売り方(どのように)はどのように適応させるべきか」を捉え、組織としてどのように支えていくかを考えていかなくてはなりません。
顧客ターゲットの変化が営業組織にもたらす変化とは?
代表的な顧客ターゲットの変化としては、顧客の業界や組織規模、提供エリアの転換などが挙げられます。
たとえば、今までと異なる業界へ新たなアプローチを試みるというケースや、中小企業(SMB)マーケットの顧客だけではなく中堅企業(Mid Market)や大手企業(Enterprise)にターゲットをシフトするといったようなケースです。
実際に私がお客様のセールスイネーブルメントの仕組みづくりを支援する際に多いパターンは、「注力したい特定業界のお客様へのターゲット強化」「組織規模の異なる顧客へのターゲット強化」、このふたつです。「ターゲット強化」の意味合いとしては、顧客ターゲットを今までとは異なる対象に転換するケースもあれば、顧客ターゲットを今までよりさらに対象拡張するケースも含みます。
たとえば、「今後、金融業界のお客様にさらに提案を強化していきたい」「今後、医療業界のお客様により価値を届けていきたい」となった場合、その業界固有の最低限の知識を持っていなければ、商材や営業力が優れていてもお客様のニーズを聞き出すことすら難しいかもしれません。このように、その業界の特徴やお客様の置かれた状態を捉えたうえで営業活動をしていく必要があります。
また、ターゲットとなる顧客の組織規模の変化についても同様です。これらも、ターゲットが異なると売り方も異なってきます。全体の分母となる見込み顧客数の違い、提案段階で会う方の役職の違い、検討段階での稟議プロセスの複雑性の違いなどが考えられます。
このようにお客様の業界にせよ、組織規模にせよ、顧客ターゲットが異なるとお客様の特徴にともなって営業活動のやり方は同じでないということがわかります。さらに正確に言えば、営業活動のやり方を変えていかなければお客様に正しく価値が届かなくなってしまうことを意味します。