従業員数500名規模へ急成長 「次の顧客」探しに課題
日本最大級の820万件もの法人企業マスターデータベースを有するユーソナー。
企業ホームページや有価証券報告書などさまざまなソースから情報を収集することで、企業の方向性や、DXやコスト削減などの課題感につながる特徴情報などを企業の基本情報に紐づけることができる。企業に加え、官公庁や社会福祉法人なども網羅し、支社や工場といった拠点単位で情報を管理できるのが強みだ。SFA/CRMをより使いやすくするデータ統合ツール、データ取得の入口となる名刺管理ツールなども提供している。
このユーソナーのデータベースをソリューションとして活用し、営業活動において大きな成果を挙げたのがLegalOn Technologiesだ。2017年の創業以来、「法とテクノロジーの力で、安心して前進できる社会を創る。」をパーパスとして掲げ、企業の法務部門や法律事務所向けにリーガルテックのサービスを提供しており、従業員数は2024年6月時点で500名を超える規模へと急成長した。
直近では生成AIや大規模言語モデル(LLM)などの最新テクノロジーを取り入れており、開発専任の弁護士によって法務の知見を反映した製品・サービスを提供。AIレビューサービスの「LegalForce」などに加え、2024年4月には、法務業務を包括的に支援するAI法務Platform「LegalOn Cloud」の提供を開始。日本と米国での事業展開の下、2024年5月末時点でグローバルにおいて述べ5,500社の顧客を擁する。
着実に顧客を獲得してきたLegalOn Technologiesだが、2022年に入社した同社の塩貝氏によると「質の高いリードの獲得に苦労していた」という。2019年に正式版をリリースした「LegalForce」は、すでに契約審査など法務領域の課題が顕在化していた企業への提案・導入がほとんど完了している状態。接点がある見込み客へのアプローチを強化する“リサイクル”、さらに新規開拓を行う“アウトバウンド”の強化を図ったが、受注確度の高いお客様をなかなか見極められないでいた。
リストの「マッチ率」「属性情報の付与率」に課題
受注確度の高いリストをつくれない理由について、塩貝氏は「データベースの問題で、ターゲティングが上手くできていなかった」と分析する。当時は全社でSalesforceによって企業リストを管理していたが、そもそも既存のデータベースツールのマッチ率が低く、さらにSMBや病院・士業などの情報が不足していること、十分に属性情報の付与ができていなかったことが課題としてあった。
同社が挙げた当時のマッチ率88%、属性情報の付与率85%というのは、そう低い数字には思えない。しかし、たとえば1万件の88%の8,800件がマッチしたとして、うち情報付与率が85%となればリストの数は7,480件となる。25%が顧客情報が付与されないリストであり、新たにターゲットとしたSMBや病院・士業は含まれないとなれば、大きな取りこぼしがあることがわかる。
そこで、確度の高いリストづくりを実現するために、データベースの刷新を検討。その中で、マッチ率の改善ができること、ターゲットリスト作成を効率化する機能が備わっていることから、「ユーソナー」を選定した。
同社のSalesforceの取引先・リードのデータを用いて、テストマッチを行ったところ、マッチ率は93.5%に改善。
さらにマッチしたレコードの属性付与率も、業種大分類で87%から99%に、従業員レンジで85%から98%へと改善され、トータルの付与率は21%も改善した。「マッチ率の改善が最大の目的であり、ポジティブな結果が導入の決め手となった。そして、リストを作成したときに、情報が揃った状態が実現できそうだという感触を得られた」と塩貝氏は語る。
そして、ターゲットリスト作成の効率化機能については、まず系列関係が網羅されており、グループ企業内の契約・接触状況が把握しやすいことがメリットとして挙げられた。視覚的に見やすいだけでなく、リスト化がしやすいため、ターゲットの有効化においてスピーディに活用できる。また、従業員数のレンジが細分化されているためにSMBや大企業レンジを細かく把握・分析できることも決め手となった。
商談の実施率・基準不足率が改善! 具体的な3つの施策
こうしたユーソナーのデータベースおよび機能を活用した、LegalOn Technologiesにおける施策の詳細が紹介された。
施策1.営業組織の人員配置と戦略策定に活用
ターゲット企業の従業員数レンジによって企業規模を分類し、営業組織の人員配置と営業戦略策定の際に活用している。すべてではないが、分業型の営業組織体制を取っていることもあり、インサイドセールスやフィールドセールス、カスタマーサクセスなど、会社全体の組織体制の人員配置や予算策定にも反映させている。
また、これまで情報が少なかったSMBや病院、士業、自治体などについても、リッチなリストを作成できるようになり、専任担当を置けるように。なお、リードが入ると自動的にフラグが立つようになり、取りこぼしなくスムーズな活動が可能になった。塩貝氏は「導入当時はもちろん、年度ごとの営業体制・営業戦略策定の基礎データとして活用しており、もはやなくてはならないものになっている」と評した。
施策2.ターゲティングの高度化
過去の受注傾向などから、組織ごとに細かく「Tier基準」を設定し、それに応じてKPIやアプローチの優先順位を決めている。たとえば、ある組織では上場・非上場と設立年数を組み合わせたり、非上場でも設立年数や本社所在地、担当者の役職などを組み合わせ、「従業員数が基準未満の東京本社の役員」は優先度を高くしたりするなどの調整を行っている。
施策3.企業特徴(ストーリー)分析による優先順位設定
ユーソナー独自の「企業特徴=ストーリー」を分析し、次のアプローチ先を決定することに役立てている。たとえば、予算策定などが行われる決算時はアプローチの優先度を上げる、事業所・拠点情報で子会社が増えたらアプローチするなど、一般的な企業情報とはまた異なる「旬の情報」による優先順位づけを行っている。
こうしたユーソナーのデータベースの活用もあって、受注確度の高い商談の割合が増加し、成果につながっているという。アポ獲得からキャンセルなどを除いた商談実施率では、導入前から導入後で2.0ポイント改善し、とくにアウトバウンドで2.7ポイント、リサイクルで4.0ポイントと改善度が高かった。そして、顧客として該当しない場合を基準不足として除外する「商談設定基準不足率」についても、導入前より2.5ポイント改善し、アウトバウンドで2.0、リサイクルで4.3ポイントも改善した。
塩貝氏は、「企業情報を事前に把握できたことで、リストの精度が高まり、基準不足案件が減少したのではないか。ターゲティングの効果が出ていると感じている」と語った。
ツールの一本化でコスト55%削減も
塩貝氏は、これらの施策全体を振り返り、「まずは目的であったマッチ率が大幅に改善したことは大きな成果」と評する。とくに顧客属性がリッチになったことで、リサイクル施策を実施しやすくなったことが大きい。データベースの分析結果を組織体制や人員配置など、全社的な営業戦略に活用できるようになったことも高く評価した。
そして定量的な成果にも示されているように、ターゲティングの精度向上についても、ダイレクトに受注確度の高さにつながったと認識しているという。
そして、ユーソナーの「名刺管理ツール」も導入したことを紹介。ツールの一本化が図られ、ランニングコストが55%削減された。
今後の活用方針について、塩貝氏は、「データ活用はもちろん、ストーリーについてもさらに活用していきたいと考えている。潜在顧客層についても戦略的な提案を強化するため、データ分析のチームによる商談設定確率の予測にユーソナーの属性情報を活用し、今後の営業活動の改善に役立てていきたい」と語った。
また名刺管理ツールについても、Salesforceと連携してスムーズなデータ収集に役立てたいという。たとえば展示会で名刺を獲得し、その場でユーソナーに突き合わせると、Salesforceと連携してリードが作成され、キャンペーンが自動付与されるようになっている。こうした「自動化処理」をSalesforce側で構築しており、今まで手作業で行っていたインポート作業やデータの精査業務などの効率化をさらに進めていくという。
最後に塩貝氏は、「営業活動では、どれだけ顧客の情報を持ち、分析できるか、アプローチの優先順位づけができるかが生命線となる。設定できるKPIなども変わる可能性があるだろう。引き続き継続して、営業活動におけるデータ分析・活用を実施していきたい」と語った。