最速で成果を生み出す「現場DX」のススメ
従来、大手企業におけるセールスイネーブルメントの取り組みは多くの時間とコストがかかるケースが多かったと桐原氏。しかし近年は、非常にスピーディーに決断して結果を出す大手企業が増えているという。そう前置きし、本セッションのテーマでもある「大手企業の時間軸を変えた営業DX」について解説した。
「IMD世界デジタル競争力ランキング」2023年版によれば、日本のデジタル競争力は世界32位と非常に低い。デジタル化へ期待を感じながら、実行できていないのが実態だ。DXにおけるITシステム(ツール)導入の失敗要因として、桐原氏は「ストラテジー:戦略との接続不足」「プロセス:業務の変革不足」「スピード:検討の速度不足」「マネジメント不足:役職者の関心不足」の4つを提示。このうち、3つめの「スピード」を解決する手立てとして、「現場DX」の重要性を強調した。
2017年ころまでの日本では、IT部門主導でクラウド化などを進める「全社DX」が主流だった。しかし近年は、現場の各部門が変革を推進する「現場DX」が増えているという。全社DXは投資金額が大きく、失敗のない設計をするために時間とコストがかかる。一方、現場DXは現場のリソースを割くことから早期稼働を重視しており、アジャイル型のプロジェクト推進や、特化型の機能を提供するSaaSプロダクトで小さくかつ素早く導入を進めるのが特徴だ。
全社DXと現場DXはプロジェクトの性質がまったく異なるため、推進方法も一新しなくてはならない。とくに多くの企業が陥りやすい現場DXの失敗が、「管理」を目的としてしまうことだ。先に触れたとおり、現場はパフォーマンスを高めるための「支援」を求めている。現場DXで目指すべきは、「支援中心」「運用重視」によるプロジェクトの質と、「短期検討」すなわち検討スピードの向上だという。
とくにステークホルダーの多い大手企業では、検討期間が長くなるほど、人事異動や議論の複雑化により結論がわからなくなってしまいがちだと桐原氏。検討スピードはプロジェクトの質にも影響するため、いかに素早く導入できる検討プロセスを設計していくかが、買い手・売り手双方にとって重要になる。