インサイドセールスが普及する以前、“訪問しない契約獲得”に挑戦
セミナー前半は、角家氏よりUSEN-NEXT GROUPのUSEN ICT Solutionsにおける事業展開とインサイドセールスの歩みについて語られた。
USEN-NEXT GROUPは、25の事業会社から成り立つ企業グループである。事業会社のひとつであるUSENは、2002年より法人向け高速インターネットの販売を開始。業務委託先企業に運営を任せる状態で、アポイント獲得を目的とするテレマーケティングを開始した。
2003年は100名体制でアポイントを獲得し、フィールドセールスが商談を実施。すると、業務委託先企業からトスアップされたアポイントの成約率が高いことがわかった。そこでUSENは、日本ではまだインサイドセールスという言葉も普及していない時代に“訪問しない契約獲得”への挑戦を決めた。契約につながるアポイントを多く獲得した精鋭15名を派遣し、USEN内での運営をスタート。角家氏もそのうちのひとりだった。
契約数をKPIとしたことでトークスクリプトが通用しなくなり、それぞれがトークフリーでクロージングまで実行するようになった。「本当に契約を獲得できるだろうか」という現場の不安に反して、契約数は順調に増加。訪問を希望する顧客のみ、クロージングがほぼ完了した状態でフィールドセールスにエスカレーションしていった。
この成果をもとに、2005年には新たな業務委託先3社に5名ずつ委託するユニット制に挑戦する。しかし、精鋭15名とは異なり契約まで至らず、ユニット制は1年足らずで終了した。この年、業務委託先企業のプレイングリーダーであった角家氏がUSENに入社。翌年の2006年、インサイドセールス組織のマネジメントを引き継いだ。
「あくまで営業」契約を意識したKPI・育成を実施
2006年以降もサービスラインナップを拡充していき、その後提供サービス数が100を超え、相手に合わせて提案するべきサービスを考えなければアポイントの獲得も難しくなった。また、1社1社に担当営業をつけるためフィールドセールスの人員が増加。インサイドセールスがクロージングまで行わなくても全社的に契約数が上がるようになり、インサイドセールスはアポイント獲得を再開。ユニット制の反省を活かして、増員した初心者のみトークスクリプトの利用を再開した。しかし、あくまで「インサイドセールスは営業」がポリシーだったと角家氏は語る。
「契約数が上がらないとビジネス成功とは言えないため、いちばんは契約数、アポイント獲得数は評価の2番めという意識でした」(角家氏)
2017年、法人向け高速インターネット事業がUSENから会社分割され、USEN ICT Solutionsが設立される。事業承継後の2019年から2022年には、一部の顧客を担当するアカウントセールス課、カスタマーサクセス課もインサイドセールス組織内に構築された。
SDR/BDRについて、角家氏は4つのKPIを挙げた。ひとつは契約企業数。ふたつめはリサーチデータの獲得数。3つめが、フィールドセールスを対象とした満足度アンケート調査。そして4つめが、担当者名の獲得と言ったアノニマスバイネーム化だ。また、マネジメントラインだけでなくメンバーも巻き込み、さまざまな仮説設計・理解、ルール定義、中間検査を実施し、トークに留まらないスキルアップを実施している。
「インサイドセールスは、自部門の知識だけではなく、マーケティングやフィールドセールスなど、そのほかの部門の知識も多少なりとも学んでいくべき。そのように考えて変革してきた20年でした」(角家氏)