金額や受注率だけでなく「質」も評価するKPI設定とは
前回「目的は「受注」ではない⁉ “インバウンドな営業”のパイプライン管理はココが違う」では、HubSpotがインバウンドの思想をパイプライン管理にどのように落とし込んでいるかについて解説しました。第4回では、「KPI設定」のポイントについてご紹介します。
セールスの達成目標は、端的に言えば「どれだけ売れたか」であることは言わずもがなでしょう。「商談化率」「成約率」「平均単価」など、「売上金額」に直結する指標はどの企業においても営業活動の重要なポイントであり、もちろんHubSpotも例外ではありません。
HubSpotでは、確実に思想をアクションにつなげて成果を出すために、営業プロセスに沿って細かくKPIを設定し、定期的にチェックしています。とくに営業部門では「数字至上主義」に陥りがちですが、インバウンドな営業の実践においては、「数字」と「質」の両方を見ていくことが大切です。具体的にどのようにKPIを設定し、チェックしているかについて、ふたつの特徴をご紹介します。
【特徴1】KPIを細かく設定し、定期的にチェックする
営業プロセスに沿って細分化されたKPIは、たとえば、上の図の各ステージにおける「リードタイム」のほか、“Connect(接触)”のステージでの「商談化率」、“Solution Demo(ソリューションデモ)”のステージでの「エンジニアの関与率」や「提供資料の利用率」など、細部にわたって設定をしています。
細かくKPIを設定するのは、自分たちのオペレーションがきちんと回っているのか、滞っている部分はどこかをしっかりと把握し、適切なアクションをスピーディーにとれるようにするためです。
売上の数字が変化するときには、必ずそれをもたらす要素があります。営業組織では、成約率の低下が見られたあとで、その原因を探るべく慌ててデータを集めるケースも多々見られますが、最初から重要なポイントを見極め、KPIを設計することがとても重要なのです。そして、この細分化されたKPIの過去半年の変遷を、営業担当者とマネージャーが常に振り返り確認しています。
たとえば、以前こんなことがありました。“Solution Demo(ソリューションデモ)”から“Business Considerations(ビジネスへの検討)”へのステージ変遷において、「リードタイム」が設定しているKPIよりも極端に長くなっていることに気づきました。該当チームの営業担当の話をよく聞き調べていくと、デモの期間に含まれるトライアルの一部に、日本の顧客にとって難しい要素がありました。そのため、担当営業がフォローする工数が増え、時間軸が長くなっていたのです。
そこで、スムーズにステージを移行できるよう、トライアルの仕組みに共通して使えるアセットや資料を組み込み簡素化しました。これによって、顧客の時間的な負担を減らし、結果として営業の効率も改善できました。
このように、KPIは、営業の数字管理のためだけではなく、営業プロセスやアクションをも変化させ、結果的には顧客の役に立つ提案をするための材料となるのです。