実践事例、マネージャー向けやポンチ絵トレーニングも
山下 続いて、皆さんが実際に提供しているイネーブルメントプログラムについて教えてください。
田崎 こちらが書籍にも掲載されている、2023年1月時点のセールスフォース・ジャパンのプログラムです。
田崎 縦軸が職種や役職で、横軸が時系列・難易度を表しています。たとえば、入社1ヵ月の人はBootcampのトレーニングを受け、その後は部門ごとに個別のプログラムに進みます。左側がオンボーディング、右側の自己学習が既存社員向けと大きく分かれているわけです。
直近で効果があった例をひとつ。2022年11月末にSalesforce World Tour Tokyoという大きなイベントを主催しました。久しぶりのオフライン開催のため、比較的新しい社員は集客のやり方やフォローアップがわからない。そこでかなり手厚い勉強会を、集客開始前から計15回行いました。イベントでどのようなプログラム・セッションが行われるのか、どういうお客様向けなのか、徹底的に理解を深めました。結果としては、商談の足が速い中小企業において、目標を速やかに達成して第4四半期の数字に貢献したのです。対大企業はクロージングまでは行きませんでしたが、それなりの結果を残しています。
山下 イベントを主導するマーケティングチームと、セールス・イネーブルメントチームの連携のポイントはありますか。
田崎 企画の「狙い」を明らかにしておくことです。どんなお客様にどんなメッセージを届けて、どのような案件を創出したいのか。このような質問をマーケティングチームには常に行いますね。
熊谷 当社の場合、ふたつのプログラムがあります。
熊谷 メインは図の右下にある「創注イネーブルメントプログラム」です。これは管理職と営業担当が、1on1を通じて行動と結果をトレースして重要な要素を明らかにし、成果指標と育成指標で見ていくプログラムです。
もうひとつが、マネジメントがどうあるべきかを改めてプログラム化したものが「マネージャー・イネーブルメントプログラム」です。たとえば「部長目線で課長はどうあってもらいたいか」といった視点でスキルを整理し、部長と課長の1on1を行います。このふたつのプログラムを同時並行で実施しました。
山下 イネーブルメントと聞くと現場向けの育成を思い浮かべがちですが、マネジメント層にも提供し、組織として行動を促したのがポイントですね。島田さんはいかがでしょう。
島田 まず、当社における商談のフェーズを定義し、商談フェーズを進めるための必要なスキルアクションを細かく分類しました。そのスキル1つひとつに対してアセスメントを行うことで、個人・組織としての強み弱みを定量的に把握しました。
島田 当社の営業全体に必要なスキルに関しては、スキルアップ研修を実施。ここでは業務に直結するワークであることを重視しました。とくに受講者の反応が良く、現場でも活用されている研修プログラムが、山下さんに行ってもらった「ポンチ絵トレーニング」です。
従来プロダクト売りに近い営業スタイルだったのですが、ポンチ絵トレーニングの実践後はアイディア・ブレストレベルでお客様とディスカッションすることで、課題を引き出したり、本提案につなげられたりという実績が出てきました。ポンチ絵という発想が身につき「まずポンチでちょっと書いてみて」といった会話が日常的に交わされています。
山下 ありがとうございます。皆さんのお話を聞いて、プログラムを提供するだけではなく、営業組織に「変わった、役立った」実感を持ってもらえる設計が重要だと感じました。