31ヵ国のCRM統一 「なんでSalesforce?」社内の反発はゼロ
──文化や商談のスタート地点を変えていく点でも重要な役割を担っていることがわかりました。そもそも、セールスステージの標準化がすべての起点になっていると感じたのですが、この部分で難しかったことはありますか。
喜多 Fit to Standardでの推進方針の理解があったからこそ、グローバル標準化による業務変革へのハレーションは想像よりも小さかったです。31ヵ国での統一となりましたが、世界中で認知されているCRMプラットフォームですから、「なぜSalesforceを基盤に選ぶのか」という疑問の声は上がりませんでした。
友廣 とはいえ、さまざまなユーザー企業へのヒアリングや、社内のワークショップもきちんと行っていましたし、たいへんだったと思いますよ(笑)。
喜多 (笑)。ただ統一にあたって定番の「社内のハイパフォーマー営業へのインタビュー」はしませんでしたね。当社は何十年もさまざまな業種や規模のお客様に対して営業を行ってきているため、共通項を見つけるのは難しいですし、このアプローチは非常に時間がかかります。スピードを優先したかったのと、ビジネスモデル変革を同時に進める中で、現状のやり方を変える必要もあったため、グローバル企業の成功モデルに合わせていくアプローチを選択しました。
現在は31ヵ国で同様のデータを見ることができるようになり、改善を加える際に非常に役立つ状態になっています。全社のデータ活用を推進するため、データアナリティクスセンターという組織の立ち上げも行っています。一方で重要となるのは、そのデータを活用する経営層やマネジメント側の行動様式の変革や標準化で、今まさに取り組んでいます。
──経営側からの変革ということもあり、KPIの設定なども徹底的に行われていると思うのですが、ここまでの取り組みを振り返って、定量的な成果をうかがえますか。
喜多 CRMを本格活用する前はグローバルで見込みの数字を集めるのに1ヵ月ほど掛かっていたのですが、いまはほぼリアルタイムで数値を把握できます。今後は、受注予測の精度をもっと高めていきたいですね。
──セールスステージをはじめ、Salesforceの思想も吸収されている印象です。Salesforceは現在社内でどのような存在になっていますか。
喜多 Salesforceの考える「Customer 360」という言葉が富士通社内でも広がり始めています。いまやSalesforceは数字管理の基盤ではなく、すべてのお客様情報を統合したビジネス基盤へと進化しつつあり、営業だけではなく、事業部門や品質保証、保守部門、法務など、さまざまな部署で商談データの活用が始まっています。
──OneCRMのプロジェクトの中で、MAも別のツールからSalesforceが提供するAccount Engagement へ移行されたとか。
矢岡 OneCRMプロジェクトにおいては、Account Engagementはベストパートナーだと感じています。以前は、リージョンで異なるMAを使っており、グローバルで上がってくる数字がバラバラだったり、根拠がわからなかったり、リアルタイムの把握が難しかったりと営業連携においてさまざまな課題がありました。
Account EngagementはSalesforce上で動くネイティブアプリケーションで、マーケティングのデータがきちんとCRM上に残っていきます。MAに変更を加える際にCRM側の改修も必要な場合は、喜多さんや配下のメンバーに逐一報告していきますし、MAとCRMがシステム的にも、マーケティングとセールスがプロセス的にも連携する前提で物事が進むようになっています。
喜多 プロセスとシステムがつながったことで、組織同士の目線合わせも非常に行いやすくなりましたね。