パートナー企業は600社超! 連携を実現する
PRM(Partner Relationship Management)とは
――それぞれのお役割と現在のミッションを教えてください。
秋田(セールスフォース・ジャパン) Salesforceでは、コンサルティングパートナー様、再販パートナー様、Platform上でアプリの開発販売を行ってくださるAppExchangeパートナー様の3種類のパートナー様がいらっしゃいますが、私はアライアンス事業のパートナーエコシステム本部に所属し、コンサルティングパートナー様と再販パートナー様のご支援を担当しております。セールスフォース・ジャパンは右肩上がりの成長を実現しており、導入や定着を支えるパートナー企業様の拡大は急務です。2019年にDXアクセラレーションプログラムの提供を開始してからは、年に100社のペースでパートナー企業が増加しており、この3年で約2倍になりました。現在は600社を超えています。
岡田(テラスカイ) 私はテラスカイのソリューション推進本部に所属しており、セールスフォース・ジャパンとのアライアンスの窓口も担当しています。平たく言うとアカウントを持たない営業部で、アカウント営業がSalesforceのライセンスを販売する際の情報提供や支援を行っております。
――テラスカイとセールスフォース・ジャパンのパートナーシップが始まったきっかけについて教えてください。
岡田 テラスカイの代表である佐藤が、セールスフォース・ジャパンの日本法人立ち上げの際に、営業責任者として参加していました。その後スピンアウトしてテラスカイを起業したため、創業以来15年以上パートナーとしてビジネスを共に進めています。Salesforce導入・活用におけるあらゆる支援をお客様に提供しており、SIコンサルティングパートナーの顔とライセンスの再販パートナーの顔があります。
――セールスフォース・ジャパンとパートナーとは、どのようにつながっているのでしょうか。
秋田 セールスフォース・ジャパンではすべてのパートナー様の支援・連携のために2009年よりPartner Communityを提供しています。しかし、開始当初は機能や認知が不十分だったこともあり、思うように活用していただけませんでした。私がセールスフォース・ジャパンに入社した2017年以降、Partner Communityの活性化に取り組んでいたところ、もっとも活用してくださったのが岡田さんでした。
また、パートナーとより密につながるために活用しているソリューションがSales Cloud PRM(Partner Relationship Management)です。これは、いわゆる自社の営業活動管理に活用するSales Cloudを外部のパートナー様とも活用できるというソリューションです。それぞれが異なるツールを使っている際に起こってしまうコミュニケーションミスや、ビジネスのスピード感の低下を防ぐべく、Sales Cloud PRMで構築されたPartner Communityの活用推進も行っています。
――パートナー企業とのコミュニティ活用を進める際に抱えた課題があればうかがえますか。
秋田 まず、使うことのメリットを感じていただきにくかったことがありました。たとえば、Partner Community内には疑問に思ったことを確認できる「問い合わせ対応機能」があるのですが、パートナーの皆様はわざわざそこに問い合わせなくても、普段からコミュニケーションしている担当者に連絡を取ったほうが早いと感じます。そこで、まずはパートナー様のもとに直接足を運び、Partner Communityの裏側にいる我々のことを知っていただくことで活用率を上げていきました。
そのうえで「Partner Community経由で問い合わせをするほうがより早く的確な情報が得られる」と実感していただくことに注力しました。たとえば、当時は岡田さんから多くの鋭い質問をいただいていましたから、それらをナレッジとしてPartner Community上に蓄積していき、ほかのパートナー様に展開することでメリットが波及していきました。
岡田 利用する側も、当社とは違う着眼点で質問されるパートナーもおり、参考になりますし、私たちが見落としているところをセールスフォース・ジャパンやほかのパートナーからフォローいただけることもありました。そのため私はいま、何かあったらまずPartner Communityを検索していますし、PRMを活用しなければ仕事にならないと断言できます。
とくにアライアンス担当・ライセンスビジネス推進が主なミッションである私にとってPartner Communityは、「セールスフォース・ジャパンとのアライアンス推進」「現場の営業・エンジニアへの情報提供」「ライセンスの見積もりや発注含めたオペレーション業務推進」を行う場所でもあり、非常に重要な存在です。
パートナー宛メールの開封率は40%
――Partner Community活用が両社の間で加速したきっかけはありますか。
岡田 私がアライアンスの仕事を始めたときは、先ほど述べた中でも「オペレーション」部分を中心にPartner Communityを活用していたのですが、それだけではもったいないと感じていました。また、Salesforceのライセンスにはさまざまな種類があり、販売をしている現場担当者からもたくさん質問がきていたんです。よりライセンス販売のビジネスを成長させるためにも、「Partner Communityをもっと活用して、現場に活かそう」と決意し、そこから、失礼を承知でたくさんの質問をPartner Community上でさせていただきました。
秋田 私たちは、パートナーの皆様がよりナレッジを活用しやすいプラットフォームに仕上げることが課題でした。当初はPartner Community上で使えるSNSのChatterを活用してお役立ち資料を提供していたのですが、検索性を高めるために、過去のナレッジをカテゴリ化してまとめることなどを行いました。
――Partner Communityの活用以外ではどのような関係構築、仕組みづくりを実行されていますか。
秋田 定例会を実施する際、両者のタスク状況を把握しやすくするために、プロジェクト管理ツールであるQuipを活用しています。最近はSlackも活用し、よりコラボレーションしやすい環境を目指しています。
岡田 アライアンスも定例会も、タスクフォースのような活動でもQuipを使っていますよね。履歴やコメントが保存されるため、議事録をつくる必要もなくなりました。
秋田 情報共有という意味では、Marketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot)を活用してパートナー様に毎月1回重要な情報をまとめてメールをお送りしています。Partner Community上でも常に最新の情報を提供していますが、情報量が非常に多いため、ぜひ見ていただきたいものを厳選しています。Account Engagement(旧 Pardot)を活用することでリンクごとにクリック状況をトラッキングができますから、パートナー様が興味のあるコンテンツを把握し、内容の改善ができるので開封率が40%ほどになりました。
自ら学びたくなる学習プラットフォームの仕組み
――テラスカイさんでは日々進化するSalesforce製品について、どのような学習体制を用意されていますか。
岡田 当社の社員は多くがエンジニアということもあり、教育メニューに組み込まずとも、セールスフォース・ジャパンが提供する「Trailhead」上で、みんな自主的に学習していますね。その文化の影響で、営業担当者も同様に自発的に勉強をしています。私は最近、「RANGER」になりました。
秋田 素晴らしいですね。学習を進めることで「バッジ」を得られる仕組みは、Trailheadのポイントだと思います。モチベーションが上がりますよね。社内でTrailheadコンテストを開催されるパートナー様もいますし、会社の中でTrailheadのバッチ数を一定期間で競うことは、「学習の文化」づくりにも非常に良い仕組みだと思います。
岡田 日々の業務をこなしながら、トレーニング・学習の時間を確保するのはかんたんではありません。スケジュールしていたとしても、突発的な要因で出席できなくなることもあります。Trailheadは自分のペースで学習を進められますから、私も業務が終わって30分か1時間、勉強しています。また、学習コンテンツが細かく分かれており、1個ずつコツコツと進めていたらRANGERになることができていました。ストレスを感じることなくSalesforceについて学ぶことができる優れたプラットフォームだと感じています
パートナー“Management”ではなくEngagementへ
――現在はどのような体制でSalesforceのビジネスを行っていますか。
岡田 私が入社したころはSalesforceビジネスの売上比率が、SIが9割、ストック(ライセンス)が1割でした。それが現在は、SIが7割5分から8割、ストックが2割強に拡大してています。Salesforceビジネスが、SIとストックの両方で成長するなか、ストックの比率が増したのはPartner Communityを活用し、ライセンス販売の割合を増やすことができたからだと考えています。
アカウント営業はSalesforceの機能を理解していますから、提案はできます。しかし、さまざまなライセンス種別から最適なものを選ぶのは難しく「果たしてこのライセンスがお客様に最適なのか」「ライセンスを追加する際に必要な前提条件は何か」という質問に対しては、私がPartner Communityを調べて回答するというオペレーションが完成しつつあります。
――秋田さんが感じるパートナーとしてのテラスカイの素晴らしさを教えてください。
秋田 常にナンバーワンを先導するパートナー様だと思っています。たとえばSalesforceの資格の中でいちばん難しいとされる「認定テクニカルアーキテクト(CTA)」の資格を持つ人は日本に約20名いらっしゃるのですが、内6名の方がテラスカイ様に在籍されています。Salesforceの日々進化する機能、そのスピードにしっかりついてきていただいている、もっとも信頼しているパートナー様の1社です。テラスカイ様にしか相談できない案件もあります。
テラスカイ様はさまざまなクラウドインテグレーションビジネスを行っており、Salesforceがビジネスのすべてというわけではありません。その中でSalesforceの価値を客観的な立場からユーザーへ伝えていただいていることが、非常にありがたいことだと感じています。最近では、DX人材育成のプログラムも提供されるなど、IT人材不足という社会課題に対しても積極的に取り組まれていますよね。
――テラスカイでは「なぜSalesforceを売るのか」、ぜひお考えを教えてください。
岡田 きっかけは当社代表がセールスフォース・ジャパンの日本法人にジョインし、Salesforceというプラットフォームに価値を見出して、起業したことでした。ただ現在はSalesforceのソリューションがとてつもない勢いで企業規模を問わず幅広く展開されていることは大きいと思います。テラスカイとしても、さまざまな客層、業種、規模のお客様のクラウド活用に対してあらゆるご支援を提案する経験を積むことができています。
――今後両社で、あるいは他社を巻き込みながら取り組んでいきたいチャレンジについて教えてください。
秋田 エコシステムの観点で言うと、パートナー様が非常に増えていますから、ぜひ引き続きロールモデルのパートナー企業様としてご活躍いただけると嬉しいです。両者のパートナーシップもより強く、今後も引き続き結んでいきたいと思います。
岡田 セールスフォース・ジャパンとテラスカイのビジネスのつながりの入り口を担当していますから、両社のさまざまな方々とのつながり、接点を強固にしていきたいですね。そのうえで、選ばれるパートナーを目指したいですし、新しくSalesforceパートナーとなる企業さまへのご支援になるようなことも実施していきたいと考えています。
――最後に、2社の取り組みを踏まえて、良いパートナーシップを結んでいくためのアドバイスをお願いしたいと思います。
秋田 私は今まで30社以上のお客様とパートナーシップおよびにPRM活用の理想のあり方についてお話をさせていただいています。その中で、「パートナーは管理・マネジメントする対象だ」という意見もあったのですが、それは本来のパートナーシップのあり方ではないと思います。私は、パートナー様とのエンゲージメントを深め、ご支援できる関係をつくることが理想だと考えています。パートナー様がお困りのときには、メーカー/ベンダーとしてどのようなご支援ができるのかを考える。そんな関係性を実現するために、あらゆるパートナーシップでPRMを活用していただけると嬉しいです。
岡田 私たちがSalesforceのパートナーとして、インプットしなければいけない情報は多岐にわたりますが、それらを吸収して販売に活かした結果、600社のパートナーの中で現在どのランクに該当するのか、きちんと可視化されています。パートナーとしては、販売のために必要な情報がきちんと提供され、支援されていること、そしてアクションした結果が見えるかたちで返ってくる仕組みが、我々の高いモチベーションを保つことにつながっていると感じています。
――対等なパートナーシップで、ビジネスに向き合っていることがよく理解できました。本日はありがとうございました!