営業成果を左右する7つのC 「情報」と「ナレッジ」の違いを認識する
丸山 ナレッジマネジメントの重要性が見えてきましたが、ここで、「そもそもナレッジとは何か?」を掘り下げていきたいと思います。
麻野 おっしゃるとおり、ナレッジの定義を明確にすることは非常に重要です。ただでさえナレッジマネジメントは効果が出るまでに時間がかかるのに、ナレッジの定義が曖昧なまま取り入れられてしまうと、なかなか効果が出ず優先順位が下がってしまうためです。この課題は、私のクライアント企業でも多く見受けられました。
丸山 麻野さんはナレッジをどのように定義していますか。
麻野 まず認識するべきは、「情報」と「ナレッジ」の違いです。「情報」が成果を出すために取捨選択、加工編集、そして活用支援されることでようやく「ナレッジ」になる、という意識を前提として持っておくとよいでしょう。
次の図が示すのは、弊社が営業活動に関する情報をナレッジ化するプロセスで使用している「7つのC」という考え方です。創業以来さまざまな情報を分析し、セールスの成果はこの「7つのC」の完成度合いで決まってくることを導き出しました。裏を返せば、ポイントごとにナレッジを整理し「完成度合いが高い人は何をしているんだろう?」という点を具体的に見ていけばよいわけです。
こうして整理されたナレッジを皆が活用することによって、セールス組織全体の成果につながります。そして、情報と成果がうまく結びついていれば、自然と経営の中でナレッジマネジメントのプライオリティも上がるはずです。
丸山 「ただ情報を集めても成果につながらない」というのは耳が痛い話ですね。
矢野 たしかに、誰が「何のために使うのか」という目的意識がないと「とりあえず集めたけど、これって何の情報だっけ?」と混乱を招きます。とくに従来のセールスはひとりでお客さまを訪問し、結果だけをチームに報告することが普通であったため、商談の内容がブラックボックス化しがちだったと思います。オンライン商談が当たり前になることで、今まで見えていなかった情報が可視化され、ナレッジの重要性も見直されるきっかけになるのではないでしょうか。
麻野 本当にそう思います。とくに商談の録画ができるようになったのは大きいですよね。私が支援しているとある企業でも、セールスの成果を出している人とそうでない人の商談で、話している内容がまったく異なっていたことがありました。それまで成果を出せていなかった人は「フィールドセールスの成果はインサイドセールスからもらうアポの質によって決まる」と話していたのですが、実際はそうではないことがわかったんです。
中でも大きな違いを感じたのが、ヒアリングの方法です。たとえば成果を出せていない人は、商談相手に「何か課題はありませんか?」とそのまま質問を投げかけるのに対して、成果を出している人は「この業界ではこうした課題を抱えている企業が多いですが、御社はいかがですか?」という聞き方をして、課題の解決事例を紹介していました。
このプロセスをナレッジに落とし込んだことで、業界ごとの主要課題をマッピングしたり、業界ごとの事例を課題・導入理由・効果をセットにして1枚のシートで見られるようにしたりするなどの施策につなげ、劇的に効果が現れたそうです。