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メンバーと「公私のバランス」「最高の仕事」を追求する――アドビ礒貝さんの営業マネジメント論

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メンバーとともに「公私のバランス」「最高の仕事」を考える

――2019年4月に産休から復帰されて、10月からマネージャー職になられています。その経緯や、意識されていることなどについてお聞かせください。

実は、産休明けでのマネージャー昇進を打診されたのは、2度めの産休に入る直前のタイミングだったんです。これから産休に入る人をマネージャーにしよう、と判断してくれることに驚いたと同時に、自分としてはこのうえなく光栄で嬉しく、即快諾しました。

マネージャーになってからは、「どうすればメンバーが持つ力を最大限に発揮することができるのか」「そのうえで、どうすればメンバーのスキルを伸ばすことができるのか」を考え続けています。もともと、私自身が「いかにして高いモチベーションとやりがいを持ち、成果を出す働き方ができるのか」をずっと考え続けてきたため、考える対象が「自分」から「チーム」に移ったのだと思っています。

中でも意識しているのは時間の使い方です。限られた時間で成果を高めるうえでは、マネージャーが一律にメンバーを管理し、背中を見せるだけの方法では、実現することが難しいと思っています。むしろ、「必要なサポート」「新しいスキルを得るために用意するべき環境」など、メンバーと話す中で、モチベーションを高く保ち、やりがいを持って自律的に働く方法を見出すことが大切ではないでしょうか。

一例ですが、お客様からの感謝がモチベーションにつながるメンバーに対しては、ダイレクトに顧客からのポジティブな声が耳に入るようにしたり、残業が続くとパフォーマンスが下がってしまうメンバーや、難しい仕事が続くとモチベーションが下がってしまうメンバーに対しては、仕事の量や難易度を調整したり、1人ひとりと向き合っていくことを意識しています。

キャリアも同様です。ベテランのトレーナーでも、「あと何年トレーナーを続けたいか」「トレーニングを開発する側に移りたいか」などと尋ねると、三者三様の答えが返ってきます。私自身は、育休明けで責任の軽減や時短勤務を打診されるとモチベーションが下がってしまう人間ですが、「肩の荷が下りた」と、かえって安心する人もいると思います。各メンバーにとっての最善な「公私のバランス」「最高の仕事」を一緒に考え、環境を整えていくことがマネージャーの役割なのではないかと思っています。

昨年1年間、アドビグローバルでの女性リーダー向け研修に参加し、「パーソナルリーダーシップ」という、「自分のリーダーである『自分自身』が、人生や働き方を決めていく」考え方に出会いました。コロナ禍の影響で私生活の状況や価値観が多様化しているように、私たちの働き方も、より多様化していくでしょう。数多くある選択肢の中から理想の働き方を自分で見定め、その実現のために「何ができるか」「どうすればいいか」をブレイクダウンしていく。そのサポートをするのがマネージャーの仕事であると改めて感じるようになりました。1人ひとりのバックグラウンドに真摯に耳を傾けていくことが、何よりも大切であると考えています。

――今後はどのようなマネージャーになりたいと思われていますか。また、実現させたい目標などはありますか。

マネージャーになって1年半が経過しましたが、得られた実感が3つあります。ひとつは、「チャレンジは大変だけど、おもしろい」ということです。チャレンジすることでスキルも上がりますし、スキルが上がることで、よりおもしろいチャレンジができる、相乗効果を実感する機会が増えました。

ふたつめは、やはり自分ひとりで取り組む以上に、チーム全体で取り組むほうが、よりスケールの大きい仕事ができるということ。ゆえに、「マネージャーの振る舞いが、想像以上にメンバーに対して大きな影響を与えている」と感じるようになりました。先ほど申し上げたようにメンバーのモチベーションを高めていくことはもちろんのこと、「ピープルマネジメント」をしっかりできるようになりたいと思っています。

そして3つめは、「マネージャーレイヤーになれば、またマネージャーレイヤー同士の新たな関係性に出会える」ことを知りました。こうした「まだ見ぬ世界」にこれからも出会えるように、マネージャーとして自分自身を高めていきたいと思っています。さらに、個人面でのスキルアップとしては、現在取り扱っているトレーニングサービスだけでなく、デジタルマーケティングツール群である「Adobe Experience Cloud」の理解をいっそう深め、お客様にさらなる価値提供をできるようになりたいですね。

――最後にキャリア選択に悩む営業パーソンに向けて、メッセージをいただけますか。

近年は多様性への理解が進み、「柔軟な働き方」が認められ始めているように感じます。営業についても、昔の営業では考えられなかったような、さまざまな働き方・仕事のやり方が可能になってきています。そのため、「営業はこうあるべきだ」という従来の概念に囚われないでほしいですね。営業の役割はいつの時代も「お客様に価値を提供すること」ですが、そうした役割を全うするうえでの働き方、アプローチ法はいくらでも変えられるのではないでしょうか。

「今までみんながこうしていたから」というセオリーや先入観には、一度蓋をしてしまってよいと思います。とくに、「子どもが小さいから」「介護をしているから」営業職は難しい、という思い込みは払拭してもよいのではないでしょうか。むしろ、営業職は工夫すれば時間の融通が効く仕事ですし、テクノロジーも進化しています。また、昨今は会食に参加せずに営業する文化も生まれ始めています。営業の仕事が好きな人こそ、「自分らしい新しい営業職の働き方」について考え、発信していただきたいです。

 

――キャリアの歩み方を再考するきっかけとなる、勇気づけられるお話をうかがえました。本日はありがとうございました!

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この記事の著者

伊藤真美(イトウマミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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