業務効率化だけでは、売上向上や新たな価値創造にはつながらない
ディップにて、「dip Robotics」という営業DX推進をする組織の責任者をしています。もともと私は、新規事業開発の出身で新たなビジネスを生むためにはテクノロジーをどのように活用すれば良いかを常に考えながら仕事をしてきました。
数年前から、「アナログな営業活動をデジタル化できたら、どれだけ仕事がやりやすくなるだろう」と興味が湧き、営業のデジタル化に従事しています。そこで気がついたのは、業務の効率化には、「ビジネス視点」と「データ」が必要だということでした。
業務効率化だけを目指すと、営業組織にとって重要な売上に大きな変化をもたらすことは難しいです。一方、「ビジネス視点」と「データ」を活用しながら業務改善を進めることで、営業の新しい行動が誘発され、新たな価値が生まれていきます。本連載では、業務効率化だけでなく、営業のDXを実現するために必要なポイントを解説してきます。
そもそも、「デジタルトランスフォーメーション」とは?
現在さまざまなメディアで「DX(デジタルトランスフォーメーション)」というキーワードを目にする機会が増えてきました。海外の例を上げると、Amazon GoやNetflix、Uber、NIKEが成功事例として紹介されることが多いでしょう。
たとえばNetflixの大きな転換点は、従来のレンタルビデオショップをオンライン上ですべて行えるようにビジネスモデルを変革したことでした。たったそれだけのこと、と思うかもしれませんが、オフラインの店舗を前提としていれば思いつかないことでしょう。オンライン上にサービスがうつったことで、ユーザーのあらゆるデータが取得できるようになります。そうすれば、パーソナライズされたレコメンドが実現でき、レンタルの促進や延滞の防止に活かすことができます。営業現場においても、このように自社のビジネスモデルと取得できるデータに着目すると既存の営業の効率化ではなく、売上の向上や新たなビジネス価値を生むことにつながっていきます。
一方、日本に目を向けるとどうでしょうか? 海外の事例と等しい規模で成功したDXの事例は見つかりづらいでしょう。代わりに、社内のレガシーシステムの再構築や、既存の業務フローのデジタル化などシステム開発に関するものがDXとして紹介されることが多く、混乱の原因となっています。なぜこのようなことになってしまうのでしょうか。それは、最終目的である「DX」をその過程を含めてすべてDXと捉えているからだと考えられます。
このように、業務プロセスやシステム、含まれるデータをアナログからデジタルに変えていくことを「デジタイゼーション」、デジタル化されたシステムをさらに使いやすく、業務効率を上げていくことを「デジタライゼーション」、そして最終的に集まったデータを用いて新たなビジネスを描くことを「デジタルトランスフォーメーション(DX)」と呼びます。多くの企業では、DXに至るまでの過程も含めてDXと表するため、「デジタル化」「新ビジネスの構築」といったキーワードが混在しているのです。
営業DX=単なる業務効率化で終わらせないコツは課題を見つけること
では、営業現場からはどのようにDXを進めていけば良いのでしょうか。もちろん、既存のCRMやSFAを改修すれば、業務は効率化されるかもしれませんが、DXは起こりません。
営業DXを単なる業務のデジタル化で終わらせないコツは、「データ活用とビジネス変化」をプロジェクトのゴールにすることです。最初から、データを活用できる組織になるという絵を描いておくことで、ビジネスを変革するような営業DXが実現できます。そのために、どのような視点と準備が必要になるのでしょうか。
まず、DXプロジェクトにおいては、次の図のように事業開発を進めていきます。一見、今までの事業開発と比較して特に新しいことはないように見えるでしょう。しかし、注目して欲しいのは「ビジネスプロセス」を起点にデジタル化を進めていくという点です。
いきなり、目の前のシステムやデータに注目するのではなく、まずは「業務の課題」に目を向けて見ましょう。そうすると、「ここにはデータが存在しないため、正しい判断できない」「自動化ができていないので非効率だ」といった課題が見えてくるはずです。課題を特定してから、解決策を検証していけば、効率の良いシステムを構築できるのはもちろん、ビジネスや業務全体を捉える準備ができていきます。
次から、具体的にビジネスプロセスを捉えていく方法を解説します。