多くの営業は顧客の期待に沿うことができてない?
小林 連載開始から状況も変わってきました。組織や人材の戦略コンサルティングであるコーン・フェリー野見山さんをお招きし、営業組織の現状や今後必要なセールスプロセスやセールスコーチングについてお話できればと思っています。まずは、野見山さんのキャリアを伺えますか。
野見山 外資系大手製薬会社のMRからキャリアをスタートしました。昔ながらのヒューマンリレーションシップな営業スタイルから、ドクターの世代も変わり、公正競争規約や病院のアポイント制度がとられ、1回のアポで提供する価値が問われ始めてきた時期までを経験しています。
IQVIAという市場調査のデータやソリューションを販売するBtoB企業に移ってからは製薬企業の本社相手に営業活動を行っていました。マーケティング部門からアウトソースビジネスの新規事業開発までさまざまな業務を経験し、グローバルデータの日本法人の立ち上げを経て、ミラーハイマングループに入社。2019年末に同社がコーン・フェリーグループに仲間入りしました。
小林 セールスベストプラクティス調査とは、コーン・フェリー傘下となったミラーハイマングループの調査機関CSOインサイトが「成功する営業組織は何をしているのか」を主題として、過去20年にわたり実施してきた調査です。どんな人がハイパフォーマーであり、どんな組織が成功してきたかを明らかにしてきました。2019年の調査では、顧客に価値を提供できる先を見る力のある営業が必要であるという大きなトレンドがありました。ワールドクラスの人たちは、それを実現するためにどんな実践をしてきたか? 2019年は、人それぞれの優秀さを吟味するのではなく、組織力にフォーカスが当たりました。具体的な「12の実践」について抽出されています。(第1回参照)。
Korn Ferry
Business Development Director
野見山 健一郎氏
ファイザー株式会社にて開業医及び病院担当MRを経験後、アイ・エム・エス・ジャパン株式会社(現 IQVIA ジャパン)にてKey Account Manager、新製品開発プロダクトマネージャー及びCommercial Effectiveness Service部門にて新規アウトソーシングビジネスの開発責任者に従事。その後市場調査会社グローバルデータ・ジャパン株式会社ヘルスケア事業部設立。現在コーン・フェリーでは「営業変革ソリューション」ミラー・ハイマングループビジネスの日本責任者として大手日本企業を中心に営業変革を支援している。
組織力にフォーカスがあたるようになったのはここ3~4年のことです。また、2019年以前に出ていたもうひとつの大きなトレンドは「組織力」に含まれるのが営業組織だけではないということ。パフォーマンスを上げるためには、営業組織だけに任せていてはいけません。マーケティング部門はもちろん、バックオフィスチームまで含めて営業活動を支えるために連動していなかればならないという示唆がありました。この結果には、顧客側の変化も大きく関係していますよね。
野見山 自身の経験から言っても、BtoB取引において購買側のレベルは上がってきています。大きな要因はデジタル・ディスラプション――インターネットとデバイスの進化です。顧客はあらゆる情報を得るようになり、営業が情報を持っていたときには時既に遅し。時間をかけて面会するのであれば自分たちの持っている以上のものがほしい。そうでないなら、メルマガやECの提供で十分だと考えています。
モノウリではなく、ソリューションセールスであるという方針を経営は掲げてきたかもしれませんが、営業現場は追いつかず、顧客の求めるレベルに達することができていない。そのように、顧客と営業の間に心理的なギャップを埋められていない状態のなか、コロナ禍に突入し、顧客に会いに行けなくなったことで物理的なギャップも生じてしまっています。