アドビの生産性はなぜ高い?2018年からメール強化プロジェクトを
感染症拡大の認識が日本国内でも広がり始めた2月半ばより、ベンダーや展示会主催者がオフラインでのイベントの自粛を始め、見込み顧客獲得の主戦場はオンラインへと移行した。各社、ウェビナーやウェブ上のコンテンツを活用して一定の見込み顧客の創出は実現できているように思えるが、3~5月の間は訪問営業を実施できなかった企業や担当者は多く、契約に至る「営業活動」には大きく影響が出ている。急激な働き方の変化は、各社の今年度収益に少なからず影響を与えるのではないだろうか。
アドビが日本政府による新型コロナウイルスの対策基本方針決定前に行った調査で、テレワーク経験者の8割は生産性の向上を感じていると回答。今後も継続していきたいと考える人も9割を超えていた。
一方で、政府方針決定後の調査では「毎日テレワークでは生産性が下がる」という回答も増加。感染症拡大前に実施されていた従来のテレワークと現在のテレワークの決定的な違いは、「相手もテレワークである可能性が高く、望んだタイミングではなかったため家庭環境も含め自宅がテレワークに適したものになっていない」という点だとアドビ・廣川氏は考察している。
アドビのビジネスチームで生産性が落ちているのかというと「明確に否だ」と廣川氏。実際に、同社インサイドセールスチームが対になるフィールドセールスに提供している「ピッチ(=商談機会)」の件数は2月より3月に増加しており、4月1週目も月間ペースに置き換えると2月を上回るペースで推移しているというのだ。
なお、これまではインサイドセールスが電話をかけて創出されたピッチ件数が多かったというが、テレワーク移行後はメールでの創出件数が2.5倍になっているという。
アドビのレベニューチームの担当範囲は下記図に示されるとおり。マーケティングチームでは、同社が提供するMA「Marketo Engage」を活用した顧客コミュニケーションが行われているが、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスにおいてはより顧客ごとにパーソナライズされた個別メールを活用する必要がある。
同社はこのレベニューチームの生産性を上げるために、見込み客や受注額を増やすことはもちろん、同時に商談時間や工数削減を実現を目指しメール活用に着目。2018年より「メール強化プロジェクト」を立ち上げ実行している。本セミナーではその、実践によって見えてきた「メール術」が共有された。
なおメール業務効率化のために同社が活用している「Marketo Sales Connect(以下、MSC)」は、普段営業組織が活用しているGmailやOutlookから活用できる営業効率化ツールだ。MAのように、トラッキングできるURLを挿入したり、顧客のメール開封・返信・クリックなどの数値を計測したりすることができる。ブラウザ拡張機能を使えば顧客の活動をリアルタイムにフィード上で確認できることもでき、Salesforceとの連携も可能だ。
「メール強化プロジェクト」の大前提となる、3チーム共通の方針はメールテンプレートの質にこだわる前にテンプレートの数を増やし、テンプレート利用のメール配信回数をKPIとすることで、定着を図ること。まずは数をこなすことで、メール効果検証のPDCAを回す下地をつくっていくことを目指した。