対面での商談は電話で代替できるのか
中国に始まり、いまや世界中に感染が見られる新型コロナウイルス。国内でも小中学校や高校の一斉休校や、大型イベントの中止が相次いでいますね。コロナウイルスの影響は、当然ながら事業活動にも。普段は出社が当たり前の企業も、これを機にリモートワークやビデオ会議を取り入れるところが増えてきました。
さあ、これはフィールドセールスにとっては大問題です。先方が外部との会議や打ち合わせを禁止する、社内でも電車移動を制限されるなど、思うように客先に出向くことができなくなったフィールドセールスの方も多いのではないでしょうか。けれども今回の件に限らず、夏に予定されている東京オリンピック・パラリンピックの期間や、台風などによる自然災害が生じたとき、あるいは育児や介護など家庭の事情により同様の状況となることが考えられます。ということは、インサイドセールスに限らず、フィールドセールスであってもリモートで顧客とコミュニケーションを図るスキルを身につけておくほうが得策と言えるでしょう。具体的には電話で商談を行うコミュニケーションスキルです。
ここでフィールドセールスのみなさんに、お聞きしたいことがあります。みなさんが日ごろ行っているセールス活動を、電話で代替することは果たして可能でしょうか?
愚問だ、ふざけるな、電話で済むのであればとっくにやっている――そう思った人もいることでしょう。たしかに商談の相手や商材によって、またシチュエーション的に対面でなければならない場面は往々にしてあると思います。けれども顧客の状況をヒアリングしたり、商材の紹介をしたりなど、日ごろのセールス活動のほんの一部分でも電話を使って行える可能性はゼロではないはずです。そこで今回は、電話によるセールスピッチのコツを紹介したいと思います。もちろんインサイドセールスを担う人にとっても役立つ情報です。
一方的なセールスピッチの時代は終わった
まず確認したいのは、電話でのセールスピッチに対するイメージです。ベテランのフィールドセールスの中には、もしかすると新人のころの研修で電話でのセールスを経験された方がいらっしゃるかもしれません。そのときは、どのようにして顧客にアプローチしたでしょうか?おそらく相手の都合や状況を顧みず、ひととおり商材のアピールをするようなものだったのではないでしょうか。いわゆる“押し売り”です。でもこのやり方で成約できるはずがないと感じたのなら、そのとおりだと思います。
セールスピッチとは、相手の話をよく聞き、状況に理解を示し、そのうえで必要な提案をする、この組み立てを指します。つまり話の流れに応じて、持ち札のうち場に出すものや出すタイミングを変えていくのです。一方的に売りつけるわけでも、御用聞きになるわけでもありません。双方向のコミュニケーションがあって、セールスピッチは成り立つのです。これは対面だろうと電話だろうと、手段にかかわらず商談の基本といえるでしょう。
ただこの考えが日本のセールスシーンにどれだけ浸透しているかというと、わからないというのが正直なところです。というのも、“セールスピッチ(Sales Pitch)”のPitchはそもそも「投げる」という意味。ピッチャーがボールを投げるように、一方的なコミュニケーションがそもそも語源にあったわけです。ですからセールス先進国であるアメリカでも、90年代初頭までは押しまくる営業が一般的なスタイルでした。
しかし時代は変わり、インターネットの普及などにより顧客が購買プロセスの主導権を持つようになった現在は、そのやり方では通用しません。顧客がセールスに求めるのは、条件に見合う商材提案とともに、自社に対する共感とパートナーシップを伴う購買体験です。ですから対面から電話にスイッチしたからといって、(顧客と双方向のコミュニケーションが成立しているならば)基本的な考え方を変える必要はありません。それでも、対面と同じようなやり方ではうまくいかない部分も出てきます。では電話の場合のセールスピッチは、どのような点に気をつければいいのでしょう?