LinkedInは、職場におけるAIのトレンドを取り上げ、将来の仕事に与える可能性を探ることを目的に、LinkedInの登録者を対象としたAIに関するスキルの動向について分析するグローバル調査「The Global Future of Work Report: State of AI @ Work」を実施。この分析では、登録ユーザーのスキル取得や、キャリアの動向を調査した。
その結果、AIは企業の労働環境を変革しており、企業側ではAI関連のスキルを持つ人材を積極的に採用したいと考えていることがわかった。また、従業員側でもAIスキルの習得をする動きがあり、キャリア成長にとってAIスキルが重要であると双方が認識していることがわかった。一方で、AIスキルとは別に、AIでは担えない人間らしさとしてソフトスキルも重要視されていることも明らかになった。

日本でのAI人材採用は2016年から24%増に
APAC地域におけるAI人材の採用成長は、2016年の全体的な採用動向を上回っており、これにより企業は多くのAI人材を採用していることが示されている(日本 24%増、インドネシア 20%増、シンガポール 14%増、オーストラリア 12%増、インド -6%減)。企業がAI関連のスキルを持つ人材を積極的に採用したいと考えており、経営層は採用と合わせて従業員にAIのスキルを習得させるためのスキルアップの方法を模索していることもわかった。
日本ではデジタル化への取り組みを進めており、その結果、技術系人材の成長へとつながっている。また、政府はAIやチップに焦点を当てた労働市場改革に向けた措置を行っており、日本における生成AIの研究開発を後押ししている。医療、教育、金融、製造、行政業務など幅広い分野でAI利用拡大が促進しているため、AI人材の雇用が増加しているとLinkedInでは分析している。
キャリアアップにはAIスキルの習得が必須
LinkedInの「The Global Future of Work Report: State of AI @ Work」によると、AIスキルを持つプロフェッショナル人材の割合は近年急激に増加していることがわかった。2023年6月時点でのAIスキルを持つメンバーの割合は、2016年1月と比較して見ると9倍に達している。AIスキルを持つプロフェッショナル人材の間では、AIスキルを持つことが自身のキャリアアップに役立つという明確な意見が出ていることもわかった。
AIスキルだけではなくソフトスキルが重要視されるように
オーストラリアの74%、インドの71%の経営層が、AIスキルよりもソフトスキルの方が組織にとって価値があると言っていることがわかった。AIが職場でより大きな役割を果たすことになる中、AIではない人間らしさを示すソフトスキル(創造性、問題解決力、コミュニケーション能力)がより役立つとしている。AIが労働環境に変革をもたらしている一方で、同時に人間らしいソフトスキルが重要になってくると考えられる。
最近日本を対象に行った別のLinkedIn調査では、AIなどのテクノロジーが広がる中でも、今後20年間で変化が少ないとされるトップの仕事は「ネットワークを活用する仕事(40.9%)」および「コミュニケーションスキルを必要とする仕事(39.6%)」であることが明らかになった。もっとも重要なスキルが「コミュニケーションスキル(49.8%)」であることからも示されるように、ソフトスキルは引き続き需要があると言える。
日本で人気のAIスキルTOP3 1位は「機械学習」
日本全体で身につけているAIスキルのトップ3は次のとおりとなった。
1. 機械学習(Machine Learning)
データから、「機械」(コンピューター)が自動で「学習」し、データの背景にあるルールやパターンを発見するデータ分析の方法のひとつ。
2. 人工知能(Artificial Intelligence、AI)
音声認識、意志決定、視覚など、人間の知的能力に人工的にコンピュータ上で実現し、関連するタスクをコンピューターシステムが学習して実行するコンピューターサイエンスのいち分野。
3. ディープラーニング(Deep Learning)
コンピューターが自動で大量のデータを解析し、データの特徴を抽出する技術。
本調査背景・結果について
AI Skills Diffusion Indexは、ふたつ以上のAIスキルをプロフィールに持つ登録ユーザーの割合が、2016年1月と比較しどれだけ増加したかを示すもの。たとえば、3倍というのはAIスキルを持つ登録ユーザーの割合が2016年1月と比較して3倍に増加したことを意味している。この指標は、登録ユーザーがAIスキルを採用するペースや、AIスキルが特定の国や業界などでどれだけ広がっているかを理解するのに役立つ。LinkedInの登録ユーザーは、自身のスキルをLinkedInのプロフィールで自己申告する。
調査概要
- 調査対象:LinkedIn登録ユーザー
- 対象国:アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、インド、アイルランド、イスラエル、イタリア、メキシコ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、シンガポール、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、イギリス、米国、日本
- 調査時期:2023年6月のデータを使用