矢野経済研究所は、国内の働き方改革ソリューション市場を調査。主要7領域における製品カテゴリー別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。
市場概況
2019年度の国内働き方改革ソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比6.0%増の4,673億円となった。
2019年度は、2020年開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックへの対応として、東京都に事業所を構える企業を中心にテレワーク環境の整備が本格化した。また、2019年9月に日本に上陸した台風15号では、関東地方のJR・私鉄各社が計画運休を実施し、物理的に出社できない状況になったことで、事業継続性(BCP)の観点から各種働き方改革ソリューションを検討する企業が増加した。中小企業においては、2020年4月より働き方改革関連法における時間外労働の上限規制が適用されたことから、労務可視化・勤怠関連ソリューションなどを中心に導入が進んだ。
注目トピック(調査元の考察)
健康経営とは従業員の健康維持・増進を経営的視点から考え、戦略的に実践することであり、これまで法令の遵守や企業ブランドの向上、優秀な人材の確保などの観点から健康経営関連サービスの導入が進んできた。近年は、ストレスチェック制度の義務化や経済産業省による健康経営優良法人認定制度の創設などを背景として、各種サービスが拡大傾向にある。2020年度以降、新型コロナウイルス感染症への対策を契機に、健康経営関連サービスの需要が喚起されると推察する。
企業の多くは、これまで対面でのコミュニケーションを前提とした勤務形態で、毎日顔を合わせることで従業員の心身の健康状態をおおむね把握してきた。しかし、新型コロナウイルス感染症を想定した社会経済活動のなかでは、対面以外の方法で従業員の健康管理を行う必要性が高まる。具体的な導入事例として、非対面での健康管理としてウェアラブル端末の利活用や、メンタルヘルス対策の一環としてパルスサーベイ(従業員に対する高頻度の意識調査)の実施や感情分析ソリューションの導入、心身の健康状態を維持・増進させることを目的とした健康関連イベントや研修の開催などが考えられる。
将来展望
2020年度の国内働き⽅改⾰ソリューション市場規模(事業者売上⾼ベース)は前年度⽐11.0%増の5,186億円、2022年度には5,898億4,000万円までの拡⼤を予測する。今後は、新型コロナウイルス感染症への対策が働き⽅改⾰ソリューション市場に⼤きな影響を与えるとみる。
⽇本政府による「新型コロナウイルス対策の基本⽅針」(2020年2⽉25⽇)や緊急事態宣⾔の発出(同年4⽉7⽇、16⽇)などにより、2020年3⽉以降、在宅勤務を主とするテレワークの実施が急速に拡⼤した。それに伴い、ウェブ会議システムを始めとして、社内SNS・ビジネスチャットやシンクライアント・クライアント仮想化(VDI)※、オンラインファイル共有サービスなどの導⼊が拡⼤している状況にある。
さらに在宅勤務に加え、オンライン授業やオンライン営業などの社会経済活動のIT化・デジタル化に注⽬が集まっている。緊急事態時の事業継続性(BCP)の観点からも、企業や教育機関などにおける今後のIT投資の拡⼤が⾒込まれるなか、働き⽅改⾰ソリューション市場は拡⼤基調にあるものと考える。
※シンクライアント・クライアント仮想化
シンクライアントは、プログラムの実⾏やデータの保存といった機能をクライアント端末から切り離し、サーバに集中させる仕組み。クライアント仮想化は、シンクライアントの実装⽅式のひとつであり、仮想化技術を活⽤し、ユーザごとに1台の仮想マシンを占有させる⽅式。
調査概要
- 調査期間:2019年12⽉〜2020年5⽉
- 調査対象:働き⽅改⾰関連ソリューション提供事業者等
- 調査⽅法:同社専⾨研究員による直接⾯談、電話・e-mailなどによるヒアリング調査および⽂献調査併⽤