帝国データバンクでは、「決算短信」のほか「業績予想の修正」や「お知らせ」などの適時開示情報、各社のプレスリリース・ニュースリリース情報などの公開情報から、新型コロナウイルスに関連する影響や対応などについて明らかとなった上場企業を対象に調査を行った。調査結果は、下記のとおり。
新型コロナの影響を受けた企業は749社 最多は製造業
同社の調査で判明した、新型コロナウイルス感染症(正式名称「COVID-19」、以下「新型コロナ」)により工場や店舗などの休業、防疫措置など、何らかの影響を受けた上場企業は、昨年12月~3月15日(日)時点までに749社判明、上場企業(約3800社)の約2割にのぼる。このうち、もっとも多い業種は「製造業」(251社)。次いで「サービス業」(161社)となった。
45%の企業が業績へのマイナス影響に言及
影響を受けた749社のうち、具体的な影響も含め業績へのマイナス影響に言及した上場企業は計337社だった。このうち、「影響の懸念がある」など影響不確定の企業は205社、月次の客足・販売の減少、下方修正などですでに業績への影響が出た・今後出る見通しなど影響ありの企業は132社にのぼった。
中国国内の操業停止を受け生産活動にも影響 一部では部分稼働での再開も
工場などで生産調整や稼働停止といった、生産活動に影響が出た企業は87社だった。1月末~2月中旬にかけて、主に中国国内での操業停止といった動きが相次いで見られたが、その後は部分稼働などで生産を再開させる企業が多くみられる。
小売業やサービス業に影響広がる サービス提供やイベントの中止・開催は109社
他方で、新型コロナの国内感染拡大を受け、小売業やサービス業など「内需型企業」で影響が広がっている。店舗や拠点の営業休止、営業時間短縮対応など営業活動に影響が出た企業は84社判明。サービス提供・イベントなどの開催中止・延期は109社にのぼった。
82社が海外渡航禁止や自粛の対応 防疫のため働き方の変更など前向きな動きが見られる
自社や関連会社などで従業員感染が判明した企業は47社。小売やサービス、運輸などの業種で感染が発覚した。こうしたなか、防疫のためテレワークやオフピーク出勤、特別休暇制度の取得推奨など、働き方の変更を表明した企業は判明分で173社。出張・プライベートなどにおける海外渡航禁止・自粛の対応を取る企業は82社だった。
テレワーク支援や臨時休校措置に対するサービスの無償提供を行う企業も 衛生用品は需要拡大
拡大するテレワークやテレビ会議を支援するためのツール無償提供、臨時休校措置などに伴う児童への食事支援、ワクチン開発など、各種支援・サービスが判明した企業は68社。衛生用品の増産や販売など、需要拡大への対応が判明した企業も27社にのぼる。
新型コロナの影響はSARS超え 業界・企業により影響度はまだら模様で推移する見込み
同社が今年2月に全国の企業を対象に行った調査では、新型コロナによりすでにマイナスの影響が出た企業は約3割。企業が認識する新型コロナの影響度は、SARS(重症急性呼吸器症候群)の流行(2003年、「マイナスの影響あり」:17.1%)をすでに超えた。政府は大規模イベントなどの自粛を19日頃まで継続するよう要請。企業にとっては、営業自粛などの動きがもたらす経済活動の縮小が経営に悪材料となる。半面、衛生用品などでは増産など需要拡大の動きもあり、業界・企業により影響度はまだら模様で推移するとみられる。