「売って終わり」が引き起こす、営業とCSの深い溝
前回、ニーリーの営業組織における「受注は通過点。稼働・定着まで責任を持つ」という思想をお話ししました。しかし、思想があっても「行動」が変わらなければ意味がありません。
そこで我々が構築したのが、「営業とCSが同じKPIを追う」という仕組みです。
株式会社ニーリー 執行役員 小川洋子
1986年東京都生まれ。大学卒業後、株式会社リクルートに新卒入社。住宅領域にて営業職としてキャリアをスタート。 産休・育休を経て当時リクルートでは初となる時短正社員として復職し、営業推進・マネジメント・採用人事など幅広い領域で活躍。仕事と家庭を両立させたキャリアを築く。2022年、SaaS企業であるNealleに転職。入社後、1年半で執行役員に就任。3名から始まったチームを160名超にまで拡大させ、T2D3を上回るペースでのARRで成長中。
これは、私たちのようなSaaS組織では一般的に「The Model型」の分業体制をとっていることが多く、珍しいことかもしれません。しかし、営業が強引に受注をもぎ取り、そのしわ寄せがCSに回る──。こうした「営業とCSの溝」という構造的な課題に、今多くのSaaS企業が直面しているという話をたびたび耳にします。
今回は、「営業とCSが共通のKPIを追う」というこの仕組みが、現場にどのような変化をもたらしたのかについて詳しくお話しします。
営業とCSをひとつにする「共通KPI」の設計
かつて当社も、営業とクライアントサクセス(ニーリーにおけるカスタマーサクセス部隊。以下、CS)の分業体制において、組織に歪みが発生するリスクを抱えていました。当時は、「営業のKPI=受注数」 「CSのKPI=稼働・定着」という一般的な指標を採用していました。
一見、合理的なバトンパスに見えます。しかし、営業のゴールを「受注」に置くことは、無意識に「いかに合意をもらうか」という手前の技術に終始させてしまいがちです。たとえば、懸念点に対してこちらから言及をしなかったり、やや不安なところも「できる」と言い切ってしまったり。
結果、バトンを渡されたCSは、想定外の事態に直面することになります。各部門がそれぞれのKPIを全力で追っていく仕組みそのものが、組織に“ズレ”を生んでしまいかねない危うさを孕んでいたのです。
この構造を根本から解消するために、私たちが下した決断はシンプルかつ大胆なものでした。営業のメイン指標を「受注」から、後工程と同じ「稼働・定着」へとシフトさせたのです。これは、営業のKPIを「顧客に実際に価値を届けられているか」という本質的な地点まで近づけた、とも言えます。
では、この決断によって、具体的に営業とCSの連携体制はどう変化したのか。その全容をお伝えします。

