三菱地所は、ファムメディコと共催で、神奈川県立保健福祉大学の協力のもと、国際女性デーを前に、働く女性たちの課題に取り組む企業と共創する産学医連携プロジェクト「まるのうち保健室産学医ウェルネスワーキング」を3月5日(水)に開催した。

イベント開催の背景

三菱地所では、2014年より「まるのうち保健室(※1)」プロジェクトにて、「女性(※2)の働きやすい文化醸成」をテーマに、さまざまな活動を重ねてきた。
「働く女性 健康スコア(※3)」は、神奈川県立保健福祉大学の協力のもと、疫学調査をベースとしたオリジナルアンケート(2022年より累計34社約12,000人を超える働く男女が回答)をもとに、女性特有の健康課題や就業環境など可視化するツールとして開発した。産学医が連携し、企業ごとの課題抽出ツールとしても活用し、調査結果をもとに参画企業と課題解決にむけたワーキングを重ね、企業の次なるウェルネスアクションを促す機会創出として活動を推進してきた。
※1「まるのうち保健室」:働く女性が自分らしくいられるための選択肢を増やせるように、これからのライフイベント、食、働き方、余暇の過ごし方、人生の計画など、未来の姿に寄り添うプロジェクト「Will Conscious Marunouchi」の活動のひとつ。
※2 生物学上の女性を指す
※3「働く女性健康スコア2024」
「働く女性 健康スコア」調査結果例
今回は、職場での従業員の健康課題をどのようにサポート・解決していくべきかにフォーカスをあて、「まるのうち保健室 産学医ウェルネスワーキング」を開催した。働く女性を取り巻く健康課題を起点としつつ、誰しも起こりうる不調時でも活用できる、円滑な業務推進に必要なヘルスコミュニケーション術や、健康に関する知識の共有などを、神奈川県⽴保健福祉⼤学の吉田穂波先生らがレクチャーした。また、今後の活動や課題解決へ生かしていただくための参加企業同士のワークショップも展開した。
さらに、同日午前中には、三菱地所人事部主催として役職者を対象とした「国際女性デー特別企画講演会」を開催。同社社員も回答した「働く女性 健康スコア」の結果講評とともに、これからのDE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の目指すビジョンや、ジェンダーの垣根を越え、誰もが働きやすい環境をどのようにつくり続けるかを、三菱地所のグループ社員とともに考えた。
「まるのうち保健室 産学医ウェルネスワーキング」内容
神奈川県⽴保健福祉⼤学の吉田穂波先生らとともに、働く女性 健康スコア調査結果や企業が働きやすい環境実現にむけた、目指すべきヘルスコミュニケーションについての紹介を行った。後半は、それらをソリューションとして、企業にて活用し機能させるにはどのような手法や視点を持つべきかについて、参加企業担当者間にて意見を交わすワークショップを行った。
これまでのデータから見えてきた、職場ヘルスコミュニケーションの重要性

昨年度(2024年3月発表)の働く女性 健康スコアから見えた課題に対し、参画企業とともに、女性の健康課題の解決やパフォーマンス改善にむけた企業のアクションポイントを3つ導き出した。
その中でも「職場のヘルスコミュニケーション」が重要であり、女性の健康課題解決のみならず、誰しもに起こりうる不調時において、より日常から健康に関する知識を高め、相互理解が大切であるということが示唆された。
「働く女性 健康スコア」健康課題に関するトピック(一部)
※昨年度(2024年3月発表)n=3,900回答
[健康課題]40代以上では3人にひとりが「更年期症状」「月経・PMS」の両症状で仕事に影響あり
[メンタルヘルス]「更年期症状」で9割以上、「PMS」で約6割が精神的にも症状あり
[女性のパフォーマンスを高める因子]月経痛やPMS、更年期症状による仕事への影響を軽減させる要素として、職場のヘルスコミュケーションが有効である
「企業が取り組むべき3つのキーワード」(産学医ウェルネスワーキングより)
- アクションポイント1:女性の健康課題別のケア ライフステージ別の体の変化や対処法の相互理解
- アクションポイント2:休暇制度利用の促進 休暇制度が必要なときに柔軟に使われるにはなにができるか?
- アクションポイント3:職場のヘルスコミュニケーション 心理的安全性を担保し話すことができるか?
最新データから明らかになった職場のヘルスコミュニケーションの実態

過去の調査においても、男性社員の約9割が「女性の健康についての声掛け」について悩んでいると回答しており、一方で、パフォーマンスが高い傾向にある女性社員においては、「上司・同僚は頼りになる」「職場の雰囲気は友好的」と回答した。
本年度(2025年3月発表)のヘルスコミュニケーションに関する調査では、女性自身は上司に対して、自身の健康課題を3人にひとりしか話せていないと回答している。
- 「上司に、自身の健康課題を話すことができる」女性33%、男性51%
- 「部下に、自身の健康課題を話すことができる」女性36%、男性45%
これにより、職場でのヘルスコミュニケーションに課題を感じている人が多いということが推察される。
円滑に業務を推進するための5つの声かけ実践ポイント
普段から、気づける環境・話しやすい環境の構築を目指すことが有効であり、次の5つの実践ポイントが紹介された。
その上で、会話を通じて本人の心理的安全性を確保することや、必要に応じて誰かに相談や状況を共有できるように促すこと、深刻な場合には、医療機関の受診を促すことが重要である。
- 声かけポイント1:誰にでもなりうるという意識 自分事として考えてみる
- 声かけポイント2:各症状への理解 女性特有の疾患を学び、業務にどんな支障が起こりうるかも理解しておく
- 声かけポイント3:話やすい関係づくり チームメンバーと日ごろからオープンな関係が困ったときに助かる
- 声かけポイント4:不調への気づかい 不調を気遣う一言を。共感の言葉は本人の心を開きやすくする
- 声かけポイント5:具体的なサポートの開示 役立ちたいという気持ちで、自社制度や支援策も提案してみる
参加者のコメント(建設、サービス、環境関連、コンサルティング関連、30代、女性)
今回は、各症状に対してどう対応していくかの深堀りができたので非常に参考になった。また、心理的安全性を担保したまま、どのように症状や対応に配慮していくのかを学ぶことで、企業としての姿勢を考えることにも繋がった。今後は、具体的な対策や体験会などがあれば、積極的に参加したい。
三菱地所 人事部 部長 岡安正雄氏のコメント
女性の健康課題の経済損失は3.4兆円と試算されるように、企業にとっては取り組まなければいけない大きな課題であると考えています。まずは社内の管理職層を通じて、DE&Iの考え方を浸透させ、意識改革を進めます。その結果、大丸有エリアに勤務している多くの女性をはじめ、すべての社員がより働きやすい環境を実現できるよう、企業や経営者に対して、少しでも同じ意識を持ってアクションを行っていただけるように、部署単位から貢献していきたいです。