言葉の定義を大切にすることも「哲学」?
向井 これまでのSalesZineの連載では営業の皆さんの課題に答えたり、顧客との向き合い方について考えたり、ある意味「直接的な気づき」になるような話をしてきました。
今回の対談は、そうではなく、忙しい営業パーソンの方々がスマホから離れ、自分の時間をどう過ごすべきか考えるきっかけになると良いなと思っています。
というのもインターネットやSNSは非常に便利ですが、負の側面もあります。たとえば、僕のもとには「正解」や「How」を求めている人たちがたくさん訪れます。その分、仕事や人生における「What」「Why」に焦点があたっていないというか。あえて営業向けのメディアであるSalesZine上で対談してみたかったんです。企画にあたって、編集者にも谷川さんの書籍を読んでもらい、「おもしろいからぜひやりましょう」とこの対談が決まりました。
谷川 向井さんは、ICC FUKUOKA 2024で私が登壇していたセッション「大人の教養シリーズ 経営者になぜ『哲学』が必要か?」を聴いてくださったんですよね。
向井 さまざまなビジネス系のカンファレンスに参加してきましたが、「哲学」をテーマにしたセッションは初めてで、迷わず聴講しました。もっともメモをとった講演でしたね。
セッションの中で、「日々使う言葉に気をつけましょう」というお話がありました。僕も普段の仕事の中で、「『営業』と『販売』という言葉が指すものは別物である」など、言葉の使い方を整理する機会も多いので、自分のこういった活動も「哲学なんじゃないか」と、身近に感じた瞬間があって。
谷川 そのあと廊下で声をかけてくださって、財布に入っていた最後の1枚の名刺をお渡しした記憶があります(笑)。
向井 2024年9月に京都で再会した際に、「福岡でお渡しした名刺が最後の1枚で汚れていたので、きれいなものをお持ちしました」と再度渡していただけたときは非常に感動しました。営業ですね(笑)。
谷川 セッションで取り上げた言葉は「倫理」でした。たとえば、「倫理って大事だよね」ということには誰もが同意するけれど、「倫理」を「ビジネスマナー」くらいにとらえている人もいれば、「社会を営む人間が守らなければならない原理原則」ととらえている人もいるわけです。言葉の定義が揃っていない状況は、倫理をめぐるコミュニケーションに限らず、ビジネスのあらゆる局面で生じていると思います。