持続的な収益成長を実現 国内外で注目が高まる「RevOps」とは
セッションの冒頭で川上氏は、RevOps(レブオプス、レベニューオペレーションの略)の基本的な考え方を解説した。
RevOpsとは、持続的な収益成長を実現するため、レベニュー組織の協業を戦略や戦術面で強化し、生産性を向上させる方法論や役割のことを指す。営業やマーケティング、カスタマーサクセスという「レベニュー組織」の活動が測定可能・実行可能・再現可能であることが求められる中で、それらを戦略・戦術面からサポートするとして国内外で注目されている。
RevOpsへの注目が高まっている背景として、川上氏は、デジタルの進化による購買プロセスの複雑化を挙げた。情報収集や購買の手法が多様化・複雑化したことで営業はバイヤージャーニーの主導権を失い、これまでの直線的な営業プロセスでは十分な成果が得られなくなっているのだ。
このような状況で企業が競合優位性を保ちながら顧客へアプローチするには、顧客とのタッチポイント1つひとつをミクロに見るのではなく、レベニュープロセスの全体をとらえて意思決定していかなければならない。しかし、部門やプロセスがサイロ化しているとデータの分断が起こり、全体像を把握できなくなる。
そこでRevOpsが効果を発揮する。RevOpsを取り入れることでサイロ化が解消され、レベニュー組織の生産性向上と顧客への一貫した価値提供が可能になるのだ。ボストン・コンサルティング・グループが2020年に発表したレポート『Revving Up Go-to-Market Operations in B2B』によると、RevOpsは次のような効果がある。
- デジタルマーケティングのROIが100%〜200%向上
- 営業生産性が10〜20%向上
- リードの受注率が10%向上
- 社内顧客(社内のレベニュー部門)の満足度が15〜20%向上
- GTM(Go-To-Market)費用が30%削減
まだまだ成長中の概念と言えるRevOpsだが、概念の広がりとともにRevOpsの構成要素は確立されてきている。川上氏は、RevOpsを構成する4つの要素を解説した。
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RevOpsを構成する「4つの要素」とテクノロジー
RevOpsは、GTM戦略を基盤として「オペレーションマネジメント」「レベニューイネーブルメント」「RevTechマネジメント」「データマネジメントインサイト」の4つの要素で構成される。
- オペレーションマネジメント:プロセスの設計や標準化、時間とコストの効率的な配分、評価とフィードバックによるパフォーマンスの改善を通じてレベニュー組織の最適化を担う
- レベニューイネーブルメント:トレーニング、コンテンツの提供、テクノロジーの利活用促進、インセンティブの設計などを通じて、フィールド組織の能力を最大限に引き出す
- RevTechマネジメント:データを活用するためのテクノロジーの導入や統合、維持管理を手掛ける。戦略の実現に向けて新技術の活用や自動化のエリア特定などを担い、ワークフローの自動化やシステム連携なども推進する。
- データマネジメントインサイト:CROやレベニュー組織の各部門の責任者が、的確なビジネス判断を行うためのデータを提供する。顧客から収集したデータの一元管理・分析を通じて、データに基づく意思決定をサポートする
これらの構成要素は、戦略や方向性の共通言語化のために戦略やオペレーションモデルのプレイブックとして明文化し、レベニュー組織全体に共有することが重要だ。
さらにテクノロジースタックの観点では、RevTechは大きく3つに分類される。ひとつめが、新規獲得やアップセル/クロスセルなど収益成長を実現する「グロースアセット」で、CRMもここに含まれる。ふたつめは、GTM戦略の実現に向けて行動やコミュニケーション、意思決定に役立つインサイトをリアルタイムで提供する「インサイト」。そして3つめが、チームやリソースの情報をもとにより高度な分析を通して収益と利益を生み出す「バリュードライバー」だ。
各セグメントのテクノロジーを導入するだけでなく、それらをつなぎ、高い生産性と可視化を実現しなければならない。川上氏は「今後ますます複雑性が増す時代において、顧客とのタッチポイントやデータソースを整理していく必要がある」と強調した。
正確な着地予測を実現する「フォーキャストマネジメント」
セッションの後半では、クリエイティブサーベイの石野氏との対談形式で、RevOpsの要である「フォーキャストマネジメント」を掘り下げた。
フォーキャストマネジメントとは売上目標の達成に向けた予測を継続的にモニタリングし、正確な業績着地見込みを立てるためのプロセスだ。データを活用して個別または全体の傾向を把握し、リスクや取るべきアクションを可視化することで、計画的な意思決定をサポートするのだ。これを実現するフォーキャストツールについて、川上氏は「レベニューテクノロジースタックのレベニューインテリジェンスに該当する」と整理する。
外資企業と日本企業の違いから再現性のあるオペレーションモデルの構築に注目した石野氏は、その具体的な施策としてフォーキャストマネジメントに取り組んできた。はじめに石野氏は、フォーキャストマネジメントを行ううえで重要となる「セールスステージとフォーキャストカテゴリー」について、ビフォーアフターを紹介した。
フォーキャストマネジメントに取り組む前のクリエイティブサーベイでは、セールスステージごとに「このステージならば○%受注できる」といったウエイトを設定し、掛け算式で算出する「加重平均法」で営業業績の着地を予測していた。加えて、書籍や他社の事例をもとに自社のビジネスモデルと合わないセールスステージを適応した結果、リード獲得や受注直前のタイミングでしかデータが入力されず、四半期初や月初の予測値と実際の着地金額がたびたびズレてしまっていたと振り返る。
現在はビジネスモデルに合ったセールスステージを時間をかけて明文化し、レベニューチームで共通言語化して、パイプラインの状況を正確に可視化できるようになったという。さらにフォーキャストカテゴリーを新たに設けたことで、気合いやガッツだけの売上予測を脱却。マネジメント層および営業担当レベルで商談の状況・受注タイミングを管理できるようになった。
営業のスタンスについても、希望的観測で目の前の商談に全力を注いでしまう状態から、目標達成に向けて逆算し、選択と集中による営業活動へと切り替えることができたという。こうしてゲームプランを実現するためのポートフォリオ管理が可能になり、商談のリスク状況まで踏まえた精度の高い着地予測を実現した。
石野氏が挙げた「ビフォー」の状況が起こってしまう要因として、川上氏は、パイプラインステージと受注確度が必ずしも一致しないことを補足した。
たとえば稟議決裁プロセスまでステージが進んだ案件を「受注確度90%」と設定しても、もし2社比較されていたら、なにも購買されない可能性を含めると受注確度は五分五分以下と言える。実態と合わない管理の結果、営業担当は案件を低いステージに留め置き、正しいステージで入力しなくなってしまうと指摘する。これに対してフォーキャストマネジメントでは、目標数値に対してフェーズや金額といった全体を見ながらチューニングし、商談構成の全体像を提示することができる。
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マイルストーンを再設計して、スリップや失注のリスクを回避
続いて石野氏は、セールスステージの整理を整理する中での「マイルストーンの再設計」について紹介した。
セールスステージを整理すると「ステージがなかなか進まない」「苦手なステージがある」といった営業担当者の行動が可視化される。そこでマイルストーンを再設計することで、ステージを進めるにはどのようなマイルストーンをクリアしなければならないかが明確になる。またそれだけではなく、マイルストーンを踏まずにステージが進んでしまった際のリスクを排除するチェックポイントとして機能するようになり、スリップや失注、「実は提案が刺さっていなかった」といった状況が改善されてきたという。
この話を受けて川上氏は、データドリブンなフォーキャストへの取り組みとしてのマイルストーンの再設計により受注可能性が高まることで、結果としてSalesforceへ入力するインセンティブを生み出していると指摘。さらにエンハンプが提供する「セールスプレイブックの策定支援」について、購買者マインドやセールスステージ、マイルストーンを進めるための武器などについて、包括的に整理できると紹介した。
ミーティングの頻度・目的を明確化し、営業活動の“リズム”をつくる
レベニュー組織間のフィードバックループは、システムだけに頼るのではなく、コミュニケーションをプランニングしていくことも不可欠だ。そのためには、営業に関するミーティングを意図をもって形成していくことが重要であるとして、石野氏が実際に取り組む「ミーティングケイデンス(頻度)」を紹介した。
クリエイティブサーベイでは四半期を13週に分けて考え、フォーキャストとパイプラインに関するミーティングを実施している。これらのミーティングは「昨四半期のトレンド分析やビジネスレビューは四半期に1回」「今四半期のチャーン予測は月に1回」「当月・翌月のフォーキャストは週に1回」など、ビジネスごとのセールスサイクルに合わせて適切な頻度を設定。また、すべてのミーティングについて「どのダッシュボードを見て、どんな会話をし、何を決めなければいけないか」まで定義している。
ミーティングケイデンスを明確に定めることで、リズム良く営業活動を行えるようになったと石野氏。加えてフォーキャストの見通しが立ちリスクを事前に検知できることで、営業部門の採用計画まで含めた意思決定のスピードがあがったという。
最後に石野氏は「この1年、フォーキャストマネジメントに取り組むことで、営業としてのアートの要素はあるが営業マネジメントはサイエンスであり、仕組み化していけることを実感をもって学んだ。一方で、テクノロジーの活用が重要であることは間違いないが、それだけで解決することはない。ビジネス要件に対してオペレーションモデルをつくり、いかに実行していくかが肝心。これは営業プロセスにかかわるあらゆることに同じことが言える」と話し、セッションを締めくくった。
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